熊本独自の味を作り上げた熊本名物「太平燕」の魅力に迫る

華僑によって熊本に伝来した熊本の郷土料理「太平燕」。たっぷりの野菜と魚介、麺の代わりに春雨を使ったヘルシーな一品です。幅広い層に愛されてきた太平燕は、学校給食のメニューに起用されるなど“ふるさとの味”の定番となっています。熊本の「太平燕」の起源は諸説ありますが、今回は、熊本県民が愛してやまないその味と魅力に迫ります。
・紅蘭亭 下通本店
・会楽園
・中華旬菜 燕燕(えんえん)
食材から調理法まで抜かりなし! 一杯から広がる味の世界を堪能して
紅蘭亭 下通本店
1934年に創業した紅蘭亭は、開店と同時に満席となるほど人気を誇る老舗の中国料理店。調理法から調味料、素材までこだわり抜いた味が自慢です。
熊本市中心部、上通から下通に続くアーケードの中に2店舗を展開。今回訪れたのは、下通の店舗です。商店街の角地に位置する紅蘭亭は、1階に洋菓子店「swiss」と「鑑真食堂」が入っているビルの2階にあります。買い物や観光の合間に立ち寄りやすい立地と、高級感あふれるゆったりとした空間が居心地を高めてくれます。



数ある人気メニューの中でも特に人気の高い太平燕(1080円)。味の決め手は、毎朝炊き上げる鶏ガラと豚骨をベースにしたスープ。主な味付けは、太平燕伝来の地・福建省産の塩「福塩」をメインに使用。昔ながらの天日干しで作られたミネラルたっぷりの塩が、味に奥行きを与えます。

具材は、時間が経ってもおいしさと食感が続くコシの強い山東省産の春雨、キャベツ、イカ、エビ、豚肉、青ネギ、キクラゲ、タマネギ、素揚げしたゆで卵など。仕上げに乾燥させた金針菜の花のつぼみをのせます。食感がよく、噛めばふわりと香る金針菜は、ほうれん草の20倍の鉄分を含んでいると言われる食材です。

高温の油で素揚げした卵は、その表面が虎の柄に似ていることから虎皮蛋(フーヒータン)と呼ばれているとか。

ヘルシーな太平燕と合わせて食すなら、豊富な天津類がおすすめ。中でも皮、タネ、成形まで一貫して行う焼売と餃子を一度に味わえる「双天津」(810円)は、みっちりタネが詰まっていて食べ応えも十分です。〆は、程よい甘さでいくらでも食べられそうな冷たい杏仁豆腐でさっぱりと。17時までのランチタイムでは、人気の太平燕と酢排骨がセットになった「中華定食」(1480円)も大満足の味わいです。

スポット名 | 紅蘭亭 下通本店 |
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電話番号 | 096−352−7177 |
所在地 | 熊本市中央区安政町5−26 |
営業時間 | 11:00〜21:00 |
休み | 無休 |
ホームページ | 紅蘭亭はこちら(外部リンク) |
昭和8年から変わらぬ味を受け継ぐ “太平燕発祥の地”と言われる中華料理店
会楽園
熊本市練兵町。街並みに溶け込むマンションの一角に、昭和8年創業、“太平燕発祥の地”と謳われる「会楽園」はあります。元々「太平燕」は、福建省の郷土料理。お祝いの席で振る舞われる、ワンタンスープのようなものだったとか。その味より派生し、熊本の郷土料理になるまで人々に愛される太平燕は、ぜひご賞味いただきたい逸品です。


「太平燕は、平和を意味する“太平”、幸せを運ぶ“燕”を冠した名前の通り、めでたい席の料理です」と話すのは3代目店主の薛(せつ)さん。2015年に店を引き継ぎ、創業者である祖父の代から続く「太平燕」の味を丁寧に守り継いでいます。

まろやかな白湯スープの「太平燕(900円)」は、胸の部位にこだわった鶏ガラを使用。強火で長時間炊き出し、塩と薄口醤油で味を整え、旨味たっぷりに仕上げています。具材は白菜、タケノコ、キクラゲ、エビ、揚げ卵。中でも薄衣をまとった大ぶりのエビは目を見張る美味しさです。優しい甘みと程よい食感を残した白菜と太めの特注春雨が、特製スープとの一体感を醸します。

また、”味変アイテム”として辛いもの好きでなくてもオススメしたいのが「辛いやつ」(30円)。スプーン1杯の発酵唐辛子をスープに溶かせば、異なる味の世界を堪能できます。酸味と辛味を内包する発酵唐辛子の旨味がマイルドなスープと調和する一杯は、想像以上に辛いにもかかわらず飲み干したくなるから不思議です。

太平燕と一緒に味わいたいのが、お米の甘味が際立つお粥と塩味の効いたザーサイ。デザートに阿蘇のジャージー牛乳を使ったミルキーな杏仁豆腐が食せるセット(1300円)。ヘルシーながらしっかり満足感のある味わいです。
創業約90年と歴史も長く時代の流れとともに、お客様に喜んでもらえるよう変えてきたこともありますが、創業時の味を守り提供し続けています。その一杯に注がれる静かな情熱とともに、ぜひご堪能ください。
スポット名 | 会楽園 |
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電話番号 | 096-352-2844 |
所在地 | 熊本市中央区新町2-7-11 プレシール新町1階 |
営業時間 | 11:30~15:00 |
休み | 月曜、第2・4・5火曜 |
四川料理の名店で修業を積んだ店主が手がける中華料理を気取らぬ雰囲気で
中華旬菜 燕燕(えんえん)
最後にご紹介するのは、肩肘張らない雰囲気で本格中華料理を食べられると地元の人々に親しまれている中国料理店「燕燕」。 熊本の老舗ホテル「熊本ホテルキャッスル」内にある本格中華料理店「桃華源」で、17年間修業を積んだ馬場貴史さんのお店です。


「燕燕」は、熊本市のバスターミナル サクラマチからほど近く、肥後銀行本店前にあります。店内には"九州四川料理の学校”の異名を持つ老舗「桃花源」の名入りの鏡が飾られています。


野菜出汁と鶏がらスープのダブルスープで魅せる「太平燕」は、コクがありやさしい味わいが特徴。豚肉、イカ、えび、キャベツ、もやし、しめじ、青梗菜、ゆで卵など、具材たっぷりの太平燕は、一口食べると噛みごたえのある春雨と、シャキシャキとした具材の食感、スープのゆたかな味わいが口の中に広がります。満足感のあるボリュームも特長ですね?と尋ねると「やさしい味ですが、その分たくさん食べたいでしょ?」と馬場さんは微笑みます。


多彩なメニューとリーズナブルな価格帯は、馬場さんの心意気の表れ。「太平燕」(980円)や「坦々麺」(950円)などの麺料理は、地元客にもファンが多いランチタイムの定番です。

本格四川料理から熊本の食材を使った中華のアレンジメニューまで、幅広い料理が味わえる「燕燕」。人気の「太平燕」や「坦々麺」は、テイクアウトや全国発送も行っているとのこと。10分間湯煎するだけで、お店と変わらない味が自宅でも食せると評判です(※写真はお持ち帰り用)。手軽なランチやお酒の後の〆にもおすすめの逸品をぜひご賞味ください。
スポット名 | 中華旬菜 燕燕(えんえん) |
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電話番号 | 096-353-3913 |
所在地 | 熊本市中央区練兵町54-4 |
営業時間 | 11:30~13:00(LO)、18:00~21:00(LO) |
休み | 日祝日(GW、お盆の場合は不定休) |
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中城明日香
大分県生まれ、熊本市在住の編集者・ライター。
地域の出版社・編集プロダクションを経て、独立。
自然、暮らし、農業、教育、観光、ファッション、アートなど、“毎瞬”を楽しむ姿勢で幅広いジャンルの記事を手がける。仕事もプライベートも書くことが生業。