熊本の特産品を生かしたジュースやジャム。障がいのある方たちが作られたというそれらを初めて口にした時、あまりの美味しさに驚きました。一つひとつ心を込めて作るからこそ出会える味わいを通じて、丁寧なものづくりの大切さを教えてくれているようです。
忙しない日常に句読点を打つ、福祉の世界のものづくりには、今こそ見つめ直したいたくさんの学びが詰まっています。

※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、熊本県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策（新しい旅のエチケット）を徹底していただくようお願いします。
 

・天水福祉事業会
・オレンジワークの会
・サポートハウス明星学園

有明海から吹く潮風と、弾けるような太陽の光がおいしいみかんを育む玉名市天水町。ここを拠点とする「天水福祉事業会」は、障がいのある人たちとともに育てた柑橘類を使って、障がいのある人たちと一緒にジュースを作っています。中でも直径4センチほどの小さな「葉みかん」を丁寧に加工した「はみかんジュース」（1296円）は、濃厚な甘みととろりとした飲み心地が評判です。

元々、葉みかんは、日本の在来種。小粒で、種もあることから、加工には手間がかかりすぎるとして、主にお正月に鏡餅の上に飾るお供え物として重用されてきました。見た目の可愛さだけでなく、実は酸味が少なく、濃厚な甘みが凝縮された贅沢な味わいが内包されているのです。デザートとして、フルーツソースとして。一口飲めば、手間を惜しまずに作ることの大切さを実感できる一本です。

パッと目を引くカラフルなパッケージは、障がいのある利用者さんが作られたはり絵を生かしたもの。作品を作っているのは、「私は今日からはり絵をします」と宣言して以来、製作を続けているという70代女性の利用者さん。明るい色使いが特徴的なタイル絵のような貼り絵は、隣りに並べる色を吟味しながら、丁寧に仕上げています。

そのほか、毎年味を変えて展開するという「ミックスジュース」（1296円）は、さっぱりとした後味でごくごく飲めるジュースです。大人の方に好評の「ポメロ」（1296円）は、スペイン語でグレープフルーツのこと。正式な品種は、『弓削瓢柑』という品種ですが、ここでは愛着を込めて「ポメロ」と呼んでいるそうです。やさしいグレープフルーツのような酸味とさわやかな香り、あらごしの飲み心地が特徴です。オリジナルの化粧箱入りはお気に入りの味を組み合わせれば、特別感のあるギフトとしてもおすすめです（各3142円）。
昭和28年、この地に保育園を開設し、昭和54年には、知的障がい者施設を創設。その後も高齢者施設を展開するなど、「ゆりかごから天国まで」をモットーに、児童、障がい、高齢の垣根を越えた場づくりで、切れ目のない福祉の展開を進めてきた「天水福祉事業会」。明るい気持ちの循環を願う、人々の思いが詰まったギフトを受け取った方が、また楽しい気持ちになる。そんな心温まる輪が広がることを願って作られてたジュースには、明るい希望がたっぷりと含まれています。

国道501号線沿い、金峰山の西側に位置する河内町。ここは江戸時代に新田開拓の際に、温泉が湧き出たことで温泉街としても賑わいをみせていました。時勢でいつしか温泉旅館はなくなってしまいましたが、雲仙普賢岳を臨む有明海の風光明媚な佇まいは、今も変わらず人々の心を癒やしています。
この小さな漁港に面した温泉街で、かつての旅館をリノベーションした建物で活動しているのが「オレンジワークの会」です。

この地域で約60年前から除草剤を使わずに、有機肥料で育てるみかんの減農薬栽培に取り組んできた「NPO法人オレンジワークの会」の理事長寺本禮次（てらもとれいじ）さんが就労支援の場として平成20年に開設しました。農園では、減農薬・減化学肥料のみかんの特別栽培を進める傍ら、長らく障がいのある方たちと働いてきたそうです。
夏場の草刈りなど、みんなで手間暇かけて育てた野菜や柑橘類ですが、味は変わらないのに、形や傷など見た目の問題でどうしても市場に出せないものも一定数できてしまいます。そこで、廃棄される食材を使った商品開発を障がいのある方とともにはじめたのです。

人気は、温州みかんゼリーを使った「おっぺしゃん みかんゼリー」（200円）。商品名の“おっぺしゃん”とは、熊本弁で「美しくはないけれど、愛嬌や気立てが良い」という意味。見た目はよくないけれど、味は抜群。そんなみかんへの愛情を感じるネーミングです。みかんの甘味がギュッと詰まったゼリーは、やわらかい質感とまあるい味わいで、子どもから高齢者まで誰でも美味しくビタミンチャージができます。

晩柑特有のさっぱりとした甘みと風味を生かした「おっぺしゃん 河内晩柑ゼリー」（200円）は、おとなの方にファンの多い逸品です。200ミリリットルとたっぷりの容量で、小腹が空いた時にもピッタリ。デザート感覚のゼリーをごくごく飲める、満足感の高さもポイントです。飲みやすいパウチタイプで、スプーン不要の手軽さと持ち運びやすさは、シーンを選ばず、贈答品としても喜ばれそうです。

柑橘のおいしさをストレートに味わうなら、温州みかんと河内晩柑をそれぞれ絞って作った果汁100％のジュースもおすすめです（各200円）。ドライ製法のみかんは、そのまま食べるのはもちろん、お菓子作りなどにの飾りにしてもグッとオシャレ感が増す便利アイテム。全国にその味を待つファンがいる希少な特別栽培の柑橘の味わいを、ぜひ手に取ってみてくださいね。

標高600メートル以上の山間部での栽培が適しているというブルーベリーは、山都町（旧蘇陽町）の特産物。山都町に平成10年に開設した「明星学園」も、オープン当初からブルーベリーの栽培を行なってきました。

現在もおよそ1500本のブルーベリーを栽培しており、代々受け継がれてきたレシピで作るジャムやワイン、ジュースなど、いずれも素材本来の味が際立つ自慢の逸品です。「各家庭の庭に、ブルーベリーの木が植えられているところも多く、毎年収穫したブルーベリーを使ったジャムは、“家庭の味”として食卓に上っていました」と話すのはこの地域で生まれ育ったという田部さん。温かい思いの詰まったブルーベリーを、利用者の方たちと大切に育んでいます。

一般的にブルーベリーは、早生と晩生（おくて）の2種があります。早生は、糖度が高く皮も柔らかいので、生食むき。一方、晩生は、程よい酸味で加工に適しています。「明星学園」では、加工に適した晩生を使って作っているそうです。紫色に色付いたものから順に、一粒一粒丁寧に収穫していきます。完熟したブルーベリーは噛んだ瞬間、口の中いっぱいに甘酸っぱい果汁が広がります。

特に人気の高いジャムは、風味豊かな大粒のブルーベリーを使用し、素材本来の味を生かすために、ペクチンなどの凝固剤を使わずに作っています。適度な酸味を残した、ほんのり甘めのジャムは、クリームチーズやヨーグルトと馴染みが良い、さらりとしたテクスチャーが特長です。食品添加物不使用の無添加のブルーベリージャムは、「甘め」と「甘さ控えめ」「極 甘さ控えめ」の3種（各530円）。山都町の豊かな自然の恵みが凝縮されたブルーベリーのジャムは、“ブルーベリーが苦手”という方にこそ、ぜひ食べてみてほしい逸品です。

今回ご紹介した社会福祉法人 御陽会 サポートハウス明星学園「明星学園」、「特定非営利活動法人 オレンジワークの会」の加工品は、熊本市中央区「ウェルパルくまもと」内にある「ナイスハートショップ」で購入することができます。