熊本市、街中カフェ事情
下通り、上通りアーケードとのその周辺をはじめとした中心市街地など、熊本市内の“街中”には、その街の文化や魅力を語ってくれるような魅力的なカフェが続々、登場しています。地元の人にも人気のカフェを巡って、ぜひ熊本の隠れた魅力を見つけてみてくださいね!
※新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、施設へお出かけの際は、熊本県や各自治体が発表する最新情報、要請などをご確認のうえ、手洗いやマスクの着用、人と人との距離の確保など基本的な感染防止対策(新しい旅のエチケット)を徹底していただくようお願いします。
・Neu(ノイ)
・Cafe ナナセキ
・水前寺ギャラリー 茶寮松柏(しょうはく)
熊本県産食材の“新しい価値観”に出会える、スタイリッシュなカフェ
Neu(ノイ)
熊本市の中心市街地には、上通り(かみとおり)、下通り(しもとおり)、新市街などのアーケード街が広がっています。その上通りの路地裏にある「上乃裏」(かみのうら)エリアは、古着屋さんなどのオシャレなショップやカフェ、飲食店などが点在するスポット。ここに、2022年4月のオープン以来、多くの人が押し寄せる人気のカフェ「Neu」(ノイ)があります。
コンクリート打ちっぱなしの存在感が光る建物の2階に、カフェの入口が。目を引く黄緑色のサインが目印です。
窓際のテーブル席や、ちょっとしたパソコンワークもできそうなカウンター席など、居心地良い空間です。
このカフェを立ち上げたメンバーの一人、大西裕輔さん。熊本県出身で、現在は東京で活躍するクリエイティブディレクターでもあります。
そもそものはじまりは、大学から上京した大西さんが東京暮らしで気付いた、熊本の「食べ物のおいしさ」にあるのだそう。
「肉も魚も野菜も果物も水も、熊本はなんでも当たり前に美味しい土地だったと気づき、そんな熊本がとても誇らしいと感じました。一方で、自分が熊本で過ごした頃を思い返すと、高校生なんかの若い年代の人が、気軽に手頃に熊本の食の魅力を感じられるような場所が、意外になかったなあと。そんな場を作ることで街の活性化につなげたい、そう考えて『カフェ』という形にたどりついたんです」。
カフェのコンセプトは「SOMETHING NEW」。お客さんと働いている人とが「新しい何か」を共有できる場所に、との想いが込められています。お店の内装が白を基調にしたシンプルなデザインになっているのも、これから何色にでも変化していけるようにとの想いから。
このようなストーリーを持つカフェには、熊本県産の食材をおしゃれに美味しく仕上げた軽食やスイーツ、ドリンクなどのカフェメニューがそろいます。
お食事メニューは「ブルスケッタ」。焼いた薄切りのバゲットに好みの食材を乗せるイタリアの軽食です。県産をはじめとした食材の美味しさが引き立ち、かつ身構えることなく手頃に気軽に口にできて、何よりおしゃれ! シンプルイズベストなメニュー。
時期や仕入れによって、または気まぐれで「ブルスケッタ」のメニューは少しずつ変わります。取材日に出合ったこちらは「ハム&チーズ」(550円)。下のバゲットは、熊本市の人気パン店「パン オ ルヴァン」に特注で焼いてもらっているものです。
こちらは、「トマト&スイカ&チーズ」。サッパリした風味のリコッタチーズに、県産のトマト、スイカのフレッシュな甘さがマッチ。意外な組み合わせが、新しい美味しさを発見させてくれます。
さらに、規格外野菜を使ったフルーツジュースも注目です。こちらも時期や仕入れによってメニューが変わります(写真はブラッドオレンジ)。砂糖などを添加しない100%そのままの味、体に染み入る美味しさです。これも、県産の美味しい果物の存在があってこそ。
大西さんの祖父が農家を営んでおり、規格外の作物が多く廃棄されている現実を知っていたことから、「これらも大事な資源、美味しく活かせるように」との取り組み。カフェスタッフ達が様々な農家を訪れては、直接交渉して規格外だけど美味しい野菜・果物を仕入れているそうです。そんな情熱や行動力を土台に、熊本の食の魅力がストレートに伝わるようデザインされたメニューの数々、多くの人が惹かれるのに納得です。高校生、大学生などの若い世代を中心に、幅広い層のお客さんが訪れています。
スイーツも見逃せません。「レモンケーキ」(384円)は、県産レモンの風味と香りが想像以上に飛び込んできて、記憶に残る美味しさ! 他にもフィナンシェやチョコレートマフィンなど、焼き菓子はすべて店内で焼かれています。
新しい価値観で熊本県産食材の魅力を発信し、街の発展へとつなげるカフェ。
「もし旅の途中でお立ち寄りいただいたら、ぜひスタッフに話しかけて熊本の“街中”のいろんな情報を聞いてほしいです。そして、当店を起点にたくさんのお店やスポットを巡っていただきたいですね」(大西さん)。
▲写真はもう1人の立ち上げメンバー、プロデューサーの徳永龍平さん
(写真提供/Neu)
ちなみに、金・土曜のみ夜も営業。この夜間限定で、ミルクとコーヒーが美しい層を成すドリンク「オレグラッセ」が登場します。夜カフェもしっとり楽しんでみて。
スポット名 | Neu(ノイ) |
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電話番号 | 096-324-6161 |
所在地 |
熊本県熊本市中央区南坪井町2-5 カミノウラBLD 2-A |
営業時間 | 11:00~18:00(金、土曜は~24:00) |
休み | 無休 |
駐車場 | なし |
HP | Neu(ノイ)はこちら(外部リンク) |
何度でも食べたくなるソフトクリームと、限定パフェが絶品
cafe ナナセキ
下通りアーケード街から少し路地に入る「プールスコート通り沿い」。飲食店が軒を連ねるこの通りの中に、今、SNSを中心に話題となっているソフトクリーム&パフェのカフェがあります。
ビルの2階にある小さな入口の奥が、そのカフェ「cafe ナナセキ」です。営業開始前から続々と人が訪れており、人気の高さがうかがえます。
中に入ると、その名の通りわずかカウンター“7席”の小さな店内。ここに多い日で1日200人も訪れる日もあるとのこと! 2022年6月にリニューアルオープンして現在の店名となって以来、味と品質に徹底してこだわるオーナーが生み出すスイーツが人気となり、幅広い年代の人が押し寄せる人気店となっています。
ここで楽しめるのは、岩手県・岩泉酪農の牛乳を使ったこだわりのソフトクリームやフルーツパフェです。オーナーの緒方さんが全国を巡る中で出会ったというこの牛乳。低温殺菌のため遠方への出荷が少なく、西日本で味わえるのはおそらく同店だけではないかとのこと。期待で胸が膨らみます。
そんな岩泉酪農の牛乳の味わいをシンプルに楽しめるのが、「ソフトクリーム・オリジナルミルク」(レギュラー400円、ラージ600円、エクストララージ1,000円)。レギュラーサイズのみ、チョコレートやいちご、キャラメル、そして岩手県産うぐいすきな粉のトッピングが可能です(各50円)。なんとも立ち姿が美しいこのソフト。
程よいコクと甘みで、濃厚だけど後に来る抜け感が程よく、口の中にスッと溶けていくような美味しさ。それでいてミルクの風味の記憶がしっかりと残ります。ふとしたときに無性に食べたくなるような甘さです。
そして、こちらをお目当てに早くから並ぶ人が多い、「季節のフルーツパフェ」(限定数あり)。時期や仕入れによってパフェの内容は変わり、価格は時価! 熊本県産から、果物の名産地である岡山や山梨、長野ほか、その時期に一番美味しい果物を全国から仕入れて、絶品パフェに仕上げているのです。
取材日(9月上旬)は、シャインマスカットのパフェ(1,600円 ※日によって価格に変動あり)でした。これもまた美しい! こぼれそうな程にたくさん乗ったシャインマスカットの下には、岩泉酪農のソフトクリーム、柑橘系のシロップ、カスタードクリームにロイヤルティーヌ、ホイップクームが層を成し、最後には1粒分だけ入った「長野パープル」の濃厚な風味が締めてくれます。
緒方オーナーがオーダーを受けてから1つずつ手作りで仕上げていきます。その美味しさももちろんですが、丁寧な手仕事によるパフェのかわいさも人気となって、口コミやSNSで話題となっています。
シャインマスカットは、岡山県や山梨県などから品質のよいものを厳選。実際に食べて納得できる甘さと味わいであることはもちろん、見た目の美しさ、そして少しでも種が入っていないかまで、徹底的にこだわります。宝石のような美しさ…!
断面もこの通り。種がまったくなく、ジューシー感に溢れています。果物とソフトクリームの組み合わせだと、通常はどちらかの甘さがどちらかに負ける、なんてアンバランスが起こりがちですが、ナナセキのパフェは素材同士を高め合う絶妙な風味に仕上げられています。だからこそ、舌の肥えた大人達にも高い人気を誇っているんですね。これも、オーナーの食材へのこだわりと味への感性があるからこそ成せる技。なんとも贅沢なパフェです。
ちなみに、シャインマスカットは10月下旬頃まで、さらに秋は栗のモンブラン、冬には熊本県産イチゴなどが登場予定だそうです。
オーナーの緒方公一さんは、「子どもの頃よく食べたソフトクリームの美味しさが忘れられなくて」と、異業種からソフトクリームカフェを始めたそう。ここを訪れるお客様一人一人にも同じような思い出を作ってほしいからこそ、徹底したこだわりであの美味しさを生み出してくれているのです。
ちなみに「ナナセキ」は夜24時まで営業し、アルコールメニューもあります。夜カフェやバー感覚で利用したり、飲み会のシメソフト、シメパフェに舌鼓を打ったりと、昼とは違う楽しみ方ができそうです。
スポット名 | Cafe ナナセキ |
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電話番号 | 096-323-1192 |
所在地 | 熊本市中央区新市街3-19 2階 |
営業時間 | 13:00~24:00(日曜~22:00) |
休み | 木曜 |
駐車場 | なし |
HP | Cafe ナナセキはこちら(外部リンク) |
熊本の食の魅力に触れ、心の居場所にしたくなる和カフェ
水前寺ギャラリー 茶寮松柏(しょうはく)
中心市街地から市電で約15分、熊本を代表する観光地の1つ、水前寺成趣園へ。この入り口前に広がる水前寺参道商店街沿いに、2022年3月、観光客も地元の人も注目するギャラリーカフェが登場しました。
中に入ると、熊本県木であるクスノキの大きな一枚板を贅沢に使ったカウンターがあり、公園や参道散策の途中でちょっと立ち寄ってお茶ができるようなカウンタースタイルのカフェになっています。趣ある大人なカフェ空間にうっとり。
このカフェを営む店主の市丸耕太郎さん。水前寺で60年以上の歴史を持つ旅館「松屋本館」のスタッフでもあります。長年、水前寺エリアを見守り続けた存在として、水前寺の発展や熊本県の食や文化などの魅力発信に尽力したい、そして地元の人々も集えるような居場所も作りたいとの思いで、このカフェを立ち上げたのだそうです。
こちらで楽しめる、県産食材を使った軽食メニュー「水前寺菜の湯豆腐と松柏いなり」(1,100円)。美食のお宿として、宿泊客はもちろん地元でも名高い旅館「松屋本館」の職人が作っています。
熊本で伝統的に食べられてきた「ひご野菜」の1つ、水前寺菜(すいぜんじな)を使った、珍しい湯豆腐。ぬめりの出る水前寺菜の特性と風味を生かした豆腐は、ぷるん、とろんとした食感に舌が喜びます。和食の職人による出汁との相性も抜群で、喉奥までとろんと味わえる美味しさです。水前寺菜はとても栄養価が高い野菜なので、ヘルシーで美味しくて、罪悪感も皆無です!
さらに、熊本県北にある南関町特産の「南関あげ」を使ったいなりずし「松柏いなり」も絶品です。普通のあげよりも大きく張りがある南関あげは、出汁をしっかり吸い込んで、寿司飯をきゅっと包みます。ほどよい食べ応えがあって、食後の満足感もひとしお。残念ながらテイクアウトはないのですが、「持ち帰りたい」と熱望するお客様が続出しているそうです。(松柏いなり単品は550円)。
レモネード(600円)は、柑橘類の名産地である宇城市三角町、吉田果樹園のレモンを使用。特製シロップはジンジャー、もしくは水前寺菜を選べます。茹でると紫色の茹で汁が出る水前寺菜シロップは、鮮やかなピンク色がフォトジェニック! そして、県産レモンの爽やかな風味と優しく混じり合います。
さらに、「水前寺菜のシフォンケーキ」(550円)も優しいピンク色。これも水前寺菜の自然の色味だけを使った色合いです。フワフワ食感とやさしい甘さ、可愛い見た目と、五感全体で県産食材の魅力を楽しめます。
水前寺成趣園を訪れた観光客はもちろん、地元の人にとっても隠れ家カフェ的な存在で愛されているというこちらのカフェ。確かに、観光地の真ん前とは思えないほど伸びやかで落ち着ける空間の居心地は、自分だけの居場所にしたいような魅力に溢れています。
「例えば水前寺菜は、水前寺成趣園内でも栽培されているほど、地域に密着している野菜なんですが、県外の方はあまり知らないと思います。当店に寄って珍しい熊本の食を知っていただくことで、その後の熊本観光をもう一段深く楽しんでいただけるきっかけになると嬉しいですね」と市丸さん。歴史ある水前寺の街中で、新たなムーブメントの起点ともなりそうなカフェです。
また、店舗の半分はギャラリー空間になっており、熊本県内の窯元による陶芸品などを展示販売しています。丁寧に普段使いしたくなる、珠玉の作品が一堂にそろっているので、ぜひこちらもお見逃しなく。
スポット名 | 水前寺ギャラリー茶寮松柏(しょうはく) |
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電話番号 | 096-282-8421 |
所在地 | 熊本市中央区水前寺公園7-2 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
休み | 月曜 |
駐車場 | なし |
HP | 水前寺ギャラリー茶寮松柏(しょうはく)はこちら(外部リンク) |
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中川千代美
長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。
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