未来につながる、ウェルネスな食事を楽しもう!

“食事”は、よりよく生きるための身近なアクションのひとつです。近年は、個々の趣向に応じて食のスタイルも多様化しています。肉や魚、卵や牛乳など動物性の食材を使わない「ヴィーガン」、日本の伝統食をベースにした食養料理「マクロビオティック」など様々です。熊本にもそうしたニーズに応えてくれる、レストランやカフェが少しずつ増えてきています。そこで今回は、初心者でも気軽においしく体感できる3つのスポットをご紹介します。
・くりの実カフェ(ヴィーガンの森)
・plus one organic(プラスワンオーガニック)
・SANKAKU(サンカク)
「これがヴィーガン?!」 みんなが笑顔になれるレストラン
くりの実カフェ(ヴィーガンの森)

カツカレーにハンバーグ、オムライス、パフェ…メニュー表を開くと、そこにはヴィーガンとは思えないほど華やかなメニューの数々。2023年9月から全メニューをヴィーガン対応メニューに一新した「くりの実カフェ(ヴィーガンの森)」。

人気のカフェが提供するすべてのメニューをヴィーガンにしたきっかけは、店主の寺脇重幸(てらわきしげゆき)さん(写真)が長年悩まされていた体調不良でした。
「時折起き上がれない日もあれば、胸の痛みやめまいを感じる日もありました。だけど、どこの病院で診てもらっても、20年も不調の原因がわからなかったんです」。

「最終的にたどり着いた病院で不調の原因に辿り着き、食事からのアプローチを薦められ、食事療法を試して見たところ、いつの間にか体調が悪い日がなくなっていた。体調に悩んでいたこと自体、忘れていた自分に気づいたんです」と寺脇さんは目を丸くします。


そんな日々を過ごす中でコロナが到来。改めて自分たちの店が提供できる“価値”ってなんだろうと問い直します。「自分のように食事で変わる人生があるのなら、それを伝えることこそが価値じゃないか」と料理長を説得し、ヴィーガン対応のメニューに作り替えたのです。

「ヴィーガンメニューを考案する中で、新聞で見かけた熊本出身の世界ヴィーガンコックチャンピオンの方に連絡をとらせてもらいました。すると、偶然にもうちの料理長の親戚だったことがわかって、あのときは本当に驚きました(笑)。うちにも何度か来てくれていたらしいんです」。数奇なご縁の後押しを得て、ヴィーガンへの知識や意欲はますます高まったと言います。

「ヴィーガンや食材の成分、環境のことなどさまざまな視点から学んでいますが、ヴィーガンは理にかなった食事の形です。もっと多くの方に気軽に体感してほしくて、ヴィーガンのファミリーレストランを作ろうと思いました」。
人気のメニューは卵不使用の「きのことほうれん草のオムライス」(単品1001円、セット1441円 ※スープ、サラダ、ドリンク付)。卵の代わりに使用したのはかぼちゃと豆乳と小麦粉。きのこたっぷりのクリームソースが食べ応えのある一品です。

寺脇さんのイチオシは「カツカレー」(単品1320円、セット1551円)。大豆ミートで仕立てたとは到底思えないメンチカツは、外はサクッと中はジューシー! スパイシーでやさしい味わいの本格カレーと素揚げした野菜も相性抜群。ヴィーガン料理だと言われなければ気づかないほど満足感のある逸品です。

大豆ミートを使ったから揚げにハンバーグ 、サラダ、コーンコロッケが入ったお子様ランチ(858円)。食べたいものが全部詰まったひと皿も見逃せません。大人から子どもまで喜ばれるラインナップは「食べることが大好き」という寺脇さんと、それを形にする料理長の試行錯誤の賜物です。
店内には家族連れにもうれしい小上がりを完備。いつでも気軽にお腹いっぱいヴィーガンメニューが食べられます。
スポット名 | くりの実カフェ(ヴィーガンの森) |
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営業時間 | 11:00〜19:00(OS18:15) |
休み | 無休 |
住所 | 熊本市東区江津2−28−30 |
電話番号 | 096−223−5630 |
URL |
すこやかな日々に寄り添う カフェ&グロサリーショップ
plus one organic(プラス ワン オーガニック)

小高い場所に建つブルーグレーのログハウスを見ると「今日はどんな食材に出会えるだろうか」とつい心が弾みます。2021年にオープンした「プラスワンオーガニック」は、マクロビオティックを基本とした食事をはじめ、お弁当や惣菜、食材がところ狭しと並ぶカフェ兼グロサリーショップです。

扉を開けると視界に飛び込んでくるのは、新鮮な野菜やさまざまな種類のお茶、調味料などとっておきのラインナップ。いずれも店主の中嶋里美(なかしまさとみ)さんが実際に使ってみて「本当に良い!」と感じたものばかりをセレクトしています。

中嶋さんがお店を構えたのは、かつて自身が体調を壊してしまった時に、身を持って食事の大切さを実感したことがきっかけでした。「体にいい食事を提供することで周りの方へ恩返しをしたい」という思いで店を始められたそうです。提供するメニューはマクロビオティックですが、事前にお伝えすればヴィーガン対応の食事の提供もできるとのこと。「うちは食材もその時の旬のものを使いますから、毎日同じものは作れません。カフェで提供するメニューも決まったものはありませんが、その少しずつ変わる食事の中で季節の移り変わりを感じてもらえたらいいですね」。

ランチタイムに提供する「マクロビオティックランチプレート」(2300円)は、長岡式酵素玄米を基本にどれも旬の野菜のおいしさを味わえるものばかり。カラフルな野菜たちが踊るプレートは、一口食べればその個性は驚くほど豊かで、それぞれがまるで宝石のようにキラキラと輝いて見えます。使用する野菜や調味料は、実際に生産者の元を訪ね、その思いに耳を傾けてきた信頼できるものばかり。「日本野菜ソムリエ協会」の有資格者である中嶋さんと、オーガニックアドバイザーの資格を持つスタッフさんが料理や食材にまつわることなら何でも答えてくれます。



そのほか県内の生産者が手がけるハーブティーや番茶など、日常の合間にホッと一息つくにはぴったりのアイテムがそろっています。訪れるたびに新しい出会いがある「プラスワンオーガニック」。かつての八百屋さんのように、何気ない会話を楽しみながら食事からお買い物まで、私たちの日常に寄り添ってくれる空間です。
スポット名 | plus one organic |
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営業時間 | 9:30〜17:00(ランチ 金曜〜月曜11:00〜15:00)※要予約 |
休み | 水曜 |
住所 | 熊本市中央区上水前寺2−22−5 |
電話番号 | 096-284-1360 |
URL |
野菜の個性を感じるひと皿に 心とからだが満たされる
SANKAKU(サンカク)
住宅街にひっそりと佇む、とんがり屋根のレストラン「SANKAKU」。店を切り盛りするのは「幼い頃から野菜や植物の唯一無二の色や形が好きだった」と話す店主の池田のりこさんです。

中庭を眺めるテーブルに腰掛けると、まず運ばれてきたのは“白湯”。

「“お湯ですか?!”って笑われることもあるんですよ」とほほ笑む池田さんですが、そこにはちゃんと理由があるそう。「白湯は、体が本来持っている働きを高めます。体の中から温めることで、全身の巡りが良くなり、基礎体温の上昇や消化を助ける働きなどいいことづくしなんですよ」。

「料理は献立に合わせて食材を選ぶのではなく、自分の嗅覚・触覚・視覚で一つひとつの野菜を感じて、切り方や調理法を変えています」と話す池田さんは、管理栄養士の資格保持者。けれど調理は独学で、知識に縛られず野菜の個性に耳を傾ける姿勢から、野菜を愛する温かな気持ちが伝わってきます。「実際に料理をする際には、香りや色、密度、手触りを感じて野菜に耳を傾けることを大事にしています。たとえば人参は、春が一番香りがいいと言われます。そこから人参の風味や甘みを丸ごと味わえるポタージュにしようと献立を決めます」。

生産者の顔が見えるオーガニック野菜を使用した「季節のオーガニック野菜 ワンプレートランチ」(1850円)は、スープ、季節のデリの盛り合わせ、長岡式酵素玄米が基本です。この日のデリは大根と蓮根のステーキ、ねぎぼうずの天ぷら、さつまいもとじゃがいものコロッケ、赤大根のピクルスサラダ、人参とパール柑のラペ、ごぼうとセロリのローズマリー蒸し、新玉ねぎのグリルのラインナップ。お皿の中の野菜たちは、のびのびと野菜本来の味を奏でています。

デザートには、火を使わずに仕上げる「季節のraw cake」や「甘酒アイス」、「平飼い自然卵のシフォンケーキ」など自慢の味が勢ぞろい。

ケーキに添えられたミントの葉は、中庭からスタッフさんが摘んできたもの。そんな光景にも心が和みます。「子どもの頃から花や野菜を見るとその色や配置、バランスに感激していた」という池田さん。今は、その時のワクワクする感覚を「料理」という形で表現していると言います。心地いい音楽に包まれた空間で、丁寧に調理された色鮮やかな野菜を五感で味わえば、身体中にパワーが湧いてきますよ。
スポット名 | SANKAKU |
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営業時間 | 11:30〜16:00 |
休み | 水曜 |
住所 | 熊本市東区水源1−8−24 |
電話番号 | 080−9563−3867 |
URL |
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中城明日香
大分県生まれ、熊本市在住の編集者・ライター。
地域の出版社・編集プロダクションを経て、独立。
自然、暮らし、農業、教育、観光、ファッション、アートなど、“毎瞬”を楽しむ姿勢で幅広いジャンルの記事を手がける。仕事もプライベートも書くことが生業。