緑あふれる、癒やしのカフェ巡り
緑に囲まれた空間で、一杯のお茶を飲む。それだけで心に溜まったストレスが流されていくかのよう。今回は、そんなゆったりとした時間を森の中で過ごせる3つのスポットを巡ってきました!
・ゆずの木 ねむの木 みずたまの木
・葉祥明阿蘇美術館
・森の時間
山都町を五感で感じる絶景カフェ
ゆずの木 ねむの木 みずたまの木
最初に訪れたのは、熊本市中心部から車で約1時間。上益城郡山都町にある人気のカフェ「ゆずの木 ねむの木 みずたまの木」。カフェを目指す道の途中、「ロンド美術館」の看板がかかった青い小屋を目印に、さらに木立のなかを奥へと進みます。
すると「ゆずの木 ねむの木 みずたまの木」と書かれた小さな看板が現れます。
その先に続く急な坂道を登りきると、丘の上にガラス張りのカフェが建っています。なんと、店主の小坂さんが設計から建築まで行ったというセルフビルド!
出迎えてくれた小坂さんが、案内してくれたのは、森の中に設けた開放感抜群のデッキ席。阿蘇の稜線を見渡す眺望に圧倒される、特等席です。
コロナ禍に小坂さんが手作りしたというデッキ席は、「天空のお席」、「阿蘇五岳のお席」、「森のお席」の3タイプ。座席数に関わらずそれぞれ1組のみの案内で約2時間の予約制(冬場のデッキ席の利用は、希望者のみ)。虫除け用にユーカリのアロマスプレーも用意されており「森の中で気兼ねなく寛げるように」という配慮を感じるうれしい空間です。
木の温もりを感じる店内からの見晴らしも良好です。寒い季節は、暖炉の炎を眺めながら食事を楽しめます。
オーダーしたのは1番人気の「山の都のピクニックプレート」(2,000円)。山都町の食材をメインに使用。「この景色のなかでご飯を食べながら、五感で山都町を感じてほしい」と小坂さん。
今回は、サラダのマイクロきゅうりやベビーリーフ、包み焼きに使ったウィンナー、スペイン風オムレツに使う「吉田養鶏場」の卵が山都町産。ほかにも山都町の直売所で手に入る旬の野菜をたっぷり使っています。
包み焼きで味わえる「坂本牧場」の梅山豚を使用したウィンナーは、ジューシーなのにさっぱりとした後味。旬の野菜をたっぷり使ったこの日の3種の副菜は、にんじんと切り干し大根のラペ、ひじきの煮物、蓮根やさつまいものマリネ。さらに白菜のはちみつレモン漬けに、地元産のお米を使った雑穀米、かぼちゃのポタージュと盛りだくさん!
デザートには、カフェからほど近い場所にある「トンギリ山」をイメージしたコーヒー風味の白いモンブランをオーダー。モンブランの周りには、登山道に落ちている小石や木の実を想起するザクザクのクランブル。雪山を思わせる白い豆乳クリームの中には、滑らかな口当たりのモンブランクリームが詰まっています。パウダー状にした煎り玄米とクランブルを一緒に食せば、異なる食感を楽しめます。
木々のざわめく音、頬を撫でる風の音、鳥のさえずり。この場所のBGMは自然の音。旬の食材をたっぷり使った食事をしながら、山都町の雄大な自然を感じられる空間に身を置けば、日頃のストレスが流れていくよう。心も身体も元気になれる森のなかのカフェへ、ぜひ出かけてみてくださいね。
スポット名 | ゆずの木 ねむの木 みずたまの木 |
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電話番号 | 0967−82−2685 |
所在地 | 上益城郡山都町小野尻819−2 |
営業時間 | 11:00〜18:00 ※2時間ごとの予約制 |
店休日 | 不定 |
URL | ゆずの木 ねむの木 みずたまの木(外部リンク) |
物語の世界に迷い込む、草原のカフェ
葉祥明阿蘇美術館
絵本作家 葉祥明(ようしょうめい)さんの絵の原風景である南阿蘇村。丘の上にたたずむ「葉祥明阿蘇美術館」は、2002年に開館しました。この場所に土地開発の話が持ち上がり、「美しい草原を守りたい」と館長の葉山祥鼎(はやましょうてい)さんが建てた私設美術館です。館内には葉祥明さんの原画と、庭も絵も手掛けられるという館長 葉山祥鼎さんの作品も展示・販売されています。
葉祥明さんは1946年、熊本市に生まれ育ち、東京の大学に進学。ファッションイラストレーターを目指し上京したものの、同世代の絵本作家に影響を受け、絵本の制作を始めます。阿蘇を思わせる美しい情景を描いた風景画は、今なお高い人気を誇っています。
美術館にはカフェが併設されており、阿蘇で育んだハーブを使ったハーブティーやコーヒー、紅茶が味わえます(各400円)。この日オーダーした「BLUE BEE TEA」は、美術館の裏に広がる草原に、毎年やってくる青い蜂(ブルービー:黒地に縞々の青毛が生える美しい蜂)をイメージ。ほのかに甘みが広がります。ドリンクメニューはテイクアウトして外で飲むこともできるとか。
約70点の作品が並ぶ展示室の奥には、有明海まで見渡すことができる広大な2万坪の庭が広がっています。
展示室にある扉を開けた先に広がる草原は、まさに館長の自然に対する深い愛にあふれた空間。背丈ほどの高さに伸びた草原の中を歩く散策コースでは、アップダウンのある丘を20分ほどで周遊します。視界に広がるのは、緑の丘と空。多彩な景色を描く草原は、館長が20年間大切に守り続けてきた場所です。
多くの阿蘇の草原と同様に、この場所も毎年3月には、野焼きを行なっているそうです。2〜3週間後には、焼き尽くした黒い大地から再び緑の草原が大地を覆います。野焼きの時期は、かやねずみなどの生き物たちの巣穴や、まっさらな大地の姿を見ることができる貴重な機会です。阿蘇という土地の歴史と豊かさを物語る草原を目の前に、訪れる人の心を癒してくれます。
スポット名 | 葉祥明阿蘇美術館 |
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電話番号 | 0967−67−2719 |
所在地 | 阿蘇郡南阿蘇村河陽5988−20 |
営業時間 | 10:00〜16:00(最終入場15:30) |
店休日 | 不定 |
入館料 | 大人500円、中高生300円、小学生200円 |
心ほぐれる森で、森林浴のひと時を。
森の時間
熊本県と大分県の県境 小国町の森の中に「森の時間」はあります。木々に覆われた敷地内には、かつての米蔵を生かした建物、デッキスペース、個室などの空間が広がっています。取材に訪れた日は平日にも関わらず、途絶えることのないお客さまの列に驚きました。
街中で行列に並ぶ時間というのは、一見ストレスに感じる方も多いはず。けれども、ここでは家族づれや友人と森を見上げながら「紅葉の時期は綺麗だろうね〜」と誰もが笑顔で気持ちよさそうに順番を待たれていた姿が印象的でした。
「ゆっくりと自然を感じる時間を過ごしてほしい」と店主の橋本さんが「森の時間」をオープンしたのは、2019年のこと。元々、敷地内で営んでいた骨董店併設でカフェを始めたことをきっかけに、レストランも開き、この場所で10年以上飲食店を営んできたそうです。ランチプレートやこだわりのスイーツはもちろんのこと、橋本さんやスタッフの方が放つ癒やしのオーラは、それだけで「来てよかった」という気持ちになれます。
「とろとろプリン」(300円)をオーダー。「すぐに形が壊れてしまいますから‥!」という橋本さんの言葉通り、運ばれてきて3秒で撮った写真がこちら。元々は、橋本さんの子どもがアトピーで卵を食べられなかったため、庭で飼っていた鶏の卵の使い道がなく作り始めたものだとか。
使う材料は、卵、牛乳、砂糖のみ。余計なものは一切使わないシンプルな材料を、弱火でじっくりと蒸してとろける食感を引き出します。もはや形があることが奇跡のようなプリンは、とろける食感がたまりません‥!「毎回、卵の状態を見て材料の配分を調整する」という橋本さん。納得のいく味を求めて改良を重ね、20年以上作り続けてきた逸品です。
続けてオーダーしたのはジャージー牛乳をベースに黒糖と砕いたくるみを温めた「黒糖クルミみるく」(600円)、「ベイクドチーズケーキ」(500円)。
黒糖とクルミ、ジャージー牛乳の材料をミキサーにかけて温めると、自然とこんな風にふわふわの泡が立つのだとか。旬の時期は、庭で採れたくるみを使うそうです。黒糖のやさしい甘さのホットミルクと香ばしいクルミの食感が、懐かしくも新鮮、そんなおいしさが広がる一杯です。クリーミーな口当たりとさっぱりとした甘さが特徴のベイクドチーズケーキとも好相性。
「森の時間」は過ごしやすい季節の営業で、11月末日から4月中旬まで休業とのこと。訪れる際はご確認を。
春の訪れが待ち遠しくなりますね。
スポット名 | 森の時間 |
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電話番号 | 0967−42−0036 |
所在地 | 阿蘇郡南小国町赤馬場2344 |
営業時間 | 11:30〜16:30 |
店休日 | 火曜〜金曜 ※11月末日〜4月中旬まで冬季休業 |
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中城明日香
大分県生まれ、熊本市在住の編集者・ライター。
地域の出版社・編集プロダクションを経て、独立。
自然、暮らし、農業、教育、観光、ファッション、アートなど、“毎瞬”を楽しむ姿勢で幅広いジャンルの記事を手がける。仕事もプライベートも書くことが生業。