“TATAMI”のふるさと・八代。い草の魅力に触れる旅へ

熊本県中央部のやや南に位置する八代市。熊本県内では熊本市に次ぐ第2の都市です。古くから豊かな自然を活かした農業が盛んで、畳の原料となる“い草”の生産量は全国1位を誇ります。今回は八代産い草の魅力と歴史を紹介するとともに、い草の新たな楽しみ方として注目を集める“い草グルメ”を味わう旅に出かけてきました。
- 熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会
- イナダ有限会社
- 中華料理 太楼
- 焼菓子工房PLUM
全国シェアの80%以上を占めるい草の産地
熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会

畳表の原料となるい草。熊本県のい草栽培は長い歴史を誇り、1505年に現在の八代市千丁町太牟田にあった上土城の城主がい草栽培を奨励したのが始まりといわれています。熊本県八代市は現在、国産い草作付け面積の80%を占有。その大部分は八代平野で栽培されています。
畳の原料となるい草にはさまざまな特性が備わっています。その一つが香りです。森林浴のようなリラックス効果があり、畳の上で寝転んでいるとホッと安らぐという人も多いのではないでしょうか。また調湿効果や保温・断熱性を持つほか、い草を使った畳は衝撃吸収性にも優れています。
今回、八代産い草について教えてくれたのは、熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会の光永孝一さん。「八代のい草農家ではい草の栽培から畳表の製織まで行い、高い技術を持っています」と話します。

近年は価格の安い輸入い草の畳表や工業製品の畳表が増えていますが、八代産い草を使った畳表はその品質の高さに定評があります。「太さや長さを均一に揃えたい草の製織など、八代の畳表は国内外で高い評価を受けています」と光永さん。

「特に八代産い草を使った畳は香りの良さが抜群です」と教えてくれました。熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会では畳に触れる機会を増やしたいと、さまざまなイベントを開催中。自宅に畳を導入したい方向けの情報提供も行っています。ホームページをチェックしてみてください。
八代市内では一部の旅館やホテルに八代産い草を使った畳が導入されています。また八代城主・松井直之が造ったお茶屋「松浜軒」にも設置されていますので、各施設でその素晴らしさをぜひ体感してみてください。
スポット名 | 熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会 |
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電話番号 | 0965-33-8751 |
関連リンク | 熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会のホームページはこちら(外部リンク) 熊本県いぐさ・畳表活性化連絡協議会のInstagramはこちら(外部リンク) |
い草を食べる!? 新商品が次々誕生
イナダ有限会社

最初に訪れたのは県道14号沿いにある「イナダ有限会社」。ここでは多彩な「食べるい草」商品と出合えます。
創業は昭和60年。元々は、い草を畳表として織る際に使用する糸を販売する会社でした。「い草の新たな魅力や使い道を広げたいと約30年前から食用としての研究を開始しました」と常務取締役の稲田近善さん(写真右)。

い草はビタミンやミネラルなどの栄養素をはじめ、食物繊維が豊富。その栄養価の高さに注目されていたのだそう。「食用に取り組むにあたり、農薬を使わない環境に優しい栽培でい草を育てるところから手掛けました」と代表取締役の稲田剛夫さん(写真左)は話します。

店内には稲田さん達が手掛けた食べるい草の商品が勢ぞろい。


商品はお茶やふりかけのほか、プロテイン、キャンディなど実に多彩。中でも「藺草麺」はモチモチとした食感が好評の麺で、県内のレストランや学校給食でも提供されているそうです。
注目集めるヒット商品「たたみアイス」
今回おすすめしたいのが「たたみアイス」です。「熊本県民には“い草=畳”が当たり前ですが、県外の方や海外の方の中には畳の原料にい草が使われていることを知らない方もいらっしゃるんですよ。畳とい草のことをもっと知ってほしいと思って、この名前を付けました」と稲田近善さん。確かに「畳のアイス?」というのは目を引きます。


アイスは薄緑色。口に含むとい草の風味とジャージー牛乳の味わいが絶妙にマッチしています。口の中にい草の香りがほんのり広がり、苦みやクセはまったくありません。畳になる前のい草本来の香りは控えめなんだそう。この優しい味わいがクセになります。

さらに食べ進めると、たたみアイスの下に玄米アイスの層が現れます。これも畳を表現したものだそう。い草の層は畳表(たたみおもて)、玄米の層は畳の中身となる稲わらを使った昔ながらの畳床(たたみとこ)をイメージ。見た目にも畳を意識していることに驚かされます。
香ばしい玄米の風味は、い草の優しい味わいをさらに引き立ててくれます。滑らかな舌ざわりも格別。「冷蔵庫から出して、5分~10分ほどして少し溶けたくらいが食べ頃です」と稲田近善さんは教えてくれました。

稲田近善さんは「日本での畳の歴史は1300年ほどあるともいわれています。い草には心地良い香りがあり、畳のある部屋ではくつろげるという人も多いのではないでしょうか。これだけ長く愛され続けていますが、その魅力はまだまだ奥深いと考えています。これからもい草の魅力を引き出した商品を開発し、皆さまにお届けしたいと思います」と話してくれました。
「イナダ有限会社」ではミニ畳づくり体験も受け付け中(予約制)。お店が休みとなる日曜、祝日も受け付けているので問い合わせを。
スポット名 | イナダ有限会社 |
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住所 | 八代市鏡町内田 438-2 |
電話番号 | 0965-52-0656 |
営業時間 | 9:00~17:30 |
休み | 日曜、祝日 |
駐車場 | 5台 |
関連リンク | イナダ有限会社のホームページはこちら(外部リンク) |
い草を練り込んだ麺料理に舌鼓!
中華料理 太楼

昭和48年にオープンした老舗の中華料理店「中華料理 太楼」。八代市迎町で創業し、現在は八代市中心街にある本町アーケード内で営業をしています。

本町アーケードは八代市役所からほど近い場所にあります。カフェやレストラン、洋装店などが軒を連ね、地元の人から愛されている商店街です。車で訪れる際はアーケード近くに点在するコインパーキングを利用しましょう。


店内はカウンター席をはじめ、テーブルや座敷席を備えています。八代港に大型船が停泊する時は多くの外国人旅行者が訪れ、店内が満席になるほど賑わいます。

お店を営むのは2代目の武部小太郎さん。父にあたる武部孝太郎さんが東京の有名中華料理店で修業した後に帰郷し、八代にて開業。小太郎さん自身も中国に留学し、本場の中華料理を学んだそうです。
注目したのがい草を使ったラーメンです。初代が「八代をPRできるグルメを作れないだろうか」と試行錯誤し、麺にい草を練り込むことを考え付いたそうです。現在も地元の製麺所に依頼し、独自の配合で麺を作ってもらっています。

写真では少し分かりにくいのですが、い草が練り込まれた麺はほんのり緑色を帯びています。ただ、畳表のようなにおいはほとんど感じません。小太郎さんは「普通の中華麺とほぼ変わらない味ですね。歯ごたえがよく、麺が伸びにくい。い草に含まれる食物繊維も豊富です」とその魅力を語ります。
「中華料理 太楼」で提供するラーメンや焼きそばなどの麺料理は、すべてい草麺を使用。なかでも人気を集めているのが「八代ラーメン」700円です。

鶏ガラからダシをとった醬油ベースのスープに、味噌で味付けした野菜あんがたっぷり。

味噌は八丁味噌と日奈久味噌をブレンドしたもの。中華鍋で少し焦がすことでより香ばしく仕上がるそうです。
スープはスッキリとした口当たり。味噌のコクと豆板醤(とうばんじゃん)のピリッとした辛さがアクセントになっています。それらの味わいが口の中で見事に調和しているのが魅力です。

麺はコシのある中細ストレート。スープとの絡みも絶妙です。エビや豚肉、キャベツ、ネギ、卵など具材も盛りだくさんなので、お腹が大満足すること請け合いです。
お店は2025年春に現在の場所から徒歩1分ほどの同じアーケード内に移転予定。八代産い草の魅力を感じることができる一杯をぜひご賞味あれ。
スポット名 | 中華料理 太楼 |
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住所 | 八代市本町2-3-15 |
電話番号 | 0965-32-5833 |
営業時間 | 12:00~14:00 ※夜は要予約 |
休み | 月曜 |
関連リンク | 中華料理 太楼のInstagramはこちら(外部リンク) |
い草とチョコの組み合わせが絶妙なマフィンはいかが
焼菓子工房PLUM

住宅街にひっそり佇む小さな焼き菓子工房。店内にはマフィンを中心にビスケットやスコーンなど、栄養士の資格を持つ梅田美代香さんが手作りする焼き菓子が並びます。卵やバターを使わず、熊本県産の米粉を使用。「自然素材にこだわり、健康にも配慮した焼き菓子を作っています」と梅田さんはニッコリ。
店頭で販売するのは週にわずか1回ほど。不定期営業なので、詳しい営業時間はInstagramで確認してから訪れるのがおすすめです。

マフィンはチョコや紅茶、塩キャラメルなどを使った約15種各420円~。他にも夏にはレモン、秋には栗など旬の素材を使ったマフィンも登場します。


米粉のほかに全粒粉を使用したクッキーや小麦粉を使用したクラッカーなども。なかでも八代産のトマトや青のりなど、地元素材にこだわった焼き菓子も販売しています。
「青のり塩クラッカー」は甘さ控えめ。噛みしめるほどに青のりの風味がじんわりと口の中に広がります。お酒との相性もぴったりな大人向けの焼き菓子。そんな季節ごとに登場する新商品は要チェックです。ラインナップは日によって異なるので、訪れる度に新しい発見があるのも魅力ですね。

注目は、米粉にい草を練りこみ、チョコやカシューナッツをトッピングした「藺草チョコカシューナッツマフィン」。見た目はきれいな緑色。しっとり食感で、い草のほのかな風味とチョコの濃厚な味わいは相性抜群です。

生地の中にチョコが入っているのでレンジで40秒ほど温めてから食べると、チョコがトロ〜リとろけておいしさ倍増です。焼き菓子を買いに来たお客さんはい草を使っていることに驚くそう。でも一度食べるとその優しい味わいにリピーターになる方も多いそうです。

オーナーの梅田美代香さん。もともとい草の栄養価の高さに注目していたそうで「い草といろいろな食材を組み合わせてみたのですが、濃厚なチョコと香ばしいナッツがい草の優しい味わいと相性ばっちりだったんです。い草は食物繊維はもちろんですが葉酸もたっぷりと含まれています。葉酸が特に必要となる妊婦さんにおすすめですよ」と笑顔で話します。
店頭で販売する焼き菓子は数に限りがあるので売り切れてしまうことも。電話かInstagramでの予約も可能です。県内各地のイベントにも出店しているそうなので、Instagramでお店の情報をチェックしてみましょう。
スポット名 | 焼菓子工房PLUM |
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住所 | 八代市田中東町19-18 |
電話番号 | 070-8906-2269 |
営業時間 | 10:00~15:00 ※売り切れ次第終了 |
休み | 不定 |
関連リンク | 焼菓子工房PLUMのホームページはこちら(外部リンク) 焼菓子工房PLUMのInstagramはこちら(外部リンク) |
備考 | ※店舗での営業日やイベントの出店はInstagram(@plum_yakigasikoubou)で確認を |

たま
トラベルフォトライター・クリエイティブディレクター。編集・広告制作プロダクション勤務を経て独立。旅行系雑誌や生活情報誌で旅行やグルメ記事の執筆や撮影、広告制作に従事。「無駄な1日とは、笑いのなかった日のことである。」をモットーに日々奮闘中。熊本県在住。
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