シン!熊本土産な「あまかもん」たち。
いきなり団子や辛子蓮根、陣太鼓や黒糖ドーナツ棒……、熊本にはおいしいお土産が沢山あります。そんな代表する熊本土産にリスペクトを持ちつつ、「自分たちも新しい熊本土産を作るぞ!」とチャレンジするお店も多く、さまざまな「うまかもん(おいしいもの)、あまかもん(甘いもの)」が登場しています。熊本を訪れた人たちに、旅の思い出とともに刻んでほしいおいしい思い出。それぞれのシン!熊本土産に込められたストーリーと共に、味わってみてはいかがですか?
・あその姫
・菓舗 まるいわ
・菓舗 松陽軒
阿蘇神社への恩返し。老舗商店の新しいチャレンジ
あその姫
熊本地震によって境内の社殿が甚大な被害を受け、2023年12月に楼門や拝殿などが復旧した「阿蘇神社」。人気観光地なだけに、地震が深夜だったことが幸いし、さらに、「被害を阿蘇神社が背負ってくれた」と思わずにはいられないほど、周囲の被害が少なかったことは、有名な話です。
今回ご紹介する「あその姫」オーナーの宮原るみさんもまた、その想いを胸に、完全復旧を願い続けた一人。「これまで、私たちを守ってくださった阿蘇神社に恩返しがしたいと、常日頃から考えていました」と話します。
お店は「阿蘇神社」の参道へ続く町道にあり、元日は参拝者に駐車場を開放。宮原さん自ら駐車場の警備を担当しているそう。
実は、阿蘇市一の宮町をはじめ、熊本県内に5店舗ある「スーパーマーケットみやはら」の代表として、長年、「阿蘇神社」の近くで商いをしてきた宮原さん。「阿蘇神社」周辺の名物を作りたいとオープンを決めたそうです。
もちろん、飲食店ははじめてのチャレンジ。「まずは、阿蘇神社にちなんだ商品を何にするか試行錯誤しました。最初に水にちなんだものを考えましたが、断念…。続いて、ご神紋が紫色だったことや、高砂の松が縁結びの松であることなどから、“ごえんもち”が生まれました」。
賞味期限は当日中。一度食べて、帰りに買って帰る人も多い。「売上の一部は、阿蘇神社に寄付させていただけたら」と宮原さん。
大豆から作ったあんを紫芋を練り込んだ米粉の生地で包んだ“紫もち”と、シルクスイートの生地の“白もち”、小腹が空いたときにピッタリな“きんぴら”の3種をベースに、“よもぎ”などの季節の“ごえんもち”も登場します。
「お菓子づくりは初心者なので、今年3月のオープン以来、味はまだまだ進化中です」と宮原さん。ピーク時以外は、注文ごとに焼き立てを提供するため、待ち時間にゆっくり過ごせるようにと、店内にはフォトスポットやメッセージが残せるスペースを用意するなど、さまざまな工夫が。子どもたちが「楽しかった!このお店大好き!」と帰っていくこともあり、「子どもたちの笑顔が本当にかわいいんです」と宮原さんも嬉しそう。
「お客さま全員に“ありがとう”と言っていただけるために、何をするか、何が足りないか。スーパーでも『あその姫』でも常に考えています」と笑顔で続けます。さらに、お客さんからの声に応えて“おむすび(縁結び)”もスタート予定というので、こちらも楽しみです。
スポット名 | あその姫 |
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住所 | 熊本県阿蘇市一の宮町宮地1987-3 |
電話番号 | 070-5459-6663 |
営業時間 | 10:00〜17:00※売り切れ次第終了 |
休み | 不定休 |
URL | あその姫(Instagram) |
ふわふわもちもち、マチのにぎわいを守るために生まれた新名物
菓舗 まるいわ
古くからの商店が立ち並ぶ上通アーケード。熊本の人たちは、下通アーケードと共に「マチ」と呼び、昔から親しまれてきた商店街です。2023年12月にオープンした「菓舗 まるいわ」は、明治30年に馬具店として歴史が始まり、昭和初期から上通でカバン専門店として営業していた「岩崎鞄店」が営む和菓子店です。
カバン店を移転し、和菓子店へとリニューアル。マチの雰囲気に馴染むようにと和の佇まいに生まれ変わった店舗。
写真はオーナーの岩崎公子さん。「馬具店からカバン店を経て、新たに「まるいわ」の看板を掲げてスタートした背景には、マチの景色の変化があると話します。
上通アーケードは個人経営の商店が多いこともあり、後継者不足などさまざまな理由でシャッターを下ろすお店が増えてきて、マチの景色は変わってきました。かつての活気を取り戻すためにも、目的地になるお店が必要だと考え、新しい熊本のお土産を作ろう!と動き出し、『まるいわ』が誕生しました」と岩崎さん。
「まるいわ」の代表的お菓子は、どら焼きのようでどら焼きではない“あんさんどら”。パリで活躍する熊本出身のフレンチシェフがメニュー開発に携わり、伝統的な和菓子にリスペクトを持ちつつ、新しいお菓子“あんさんどら”を生み出したそうです。
“あんさんどら”の生地には、老舗酒蔵『瑞鷹』のあま酒や赤酒、宇城産のレンコン粉などを加え、もっちりしっとりとした食感に。餡子も店で手作りし、こっそりと忍ばせたクレームオブールは、なめらかな食感と味わいが餡子と絶妙に絡み合い、唯一無二の味わいを実現しています。
塩バター・お濃茶(抹茶)・ほうじ茶黒糖の3種と、季節の“あんさんどら”が楽しめます。
「熊本観光のスタートに当店がなれたらと思い、さまざまな県産食材を使用し、店頭では食材や陶器などの販売も行っています。ここで出会い、その後の旅の目的地にしていただけると嬉しいです」。
カフェで提供されるレンコン茶や、道案内の熊本弁「ぎゃん行って、ぎゃん行って、ぎゃん」をデザインしたオリジナルバッグなども販売
カフェでは、“あんさんどら”のドリンクセットや、小国ジャージーソフトやパフェなどもあじわえます。事前予約で体験できる茶室もあり
ギフト用に箱なども用意。ふるさと納税にも出品されています。
“あんさんどら”の賞味期限は、常温は当日中。冷凍での販売や発送も行っているので、お土産にもピッタリ。店内でカフェを楽しみ、ここで得た情報をもとに、いつもとは違う熊本の旅を楽しんでほしい一軒です。
スポット名 | 菓舗 まるいわ |
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住所 | 熊本県熊本市中央区上通町8-23 |
電話番号 | 070-6594-1900 |
営業時間 | 12:00〜19:00 |
休み | 水曜 |
URL | 菓舗 まるいわ(Instagram) |
老舗和菓子店の危機を救った、見た目も味わいもゾッコン!なスコーン
菓舗 松陽軒
ガタンゴトン…市電が走る風景は、熊本を訪れる人を魅了し、「一度は乗ってみたい」と旅の目的になることも。そんなのどかな車窓からの景色の中に、いかにも老舗な和菓子屋の外観に、スコーンのお菓子のタペストリーが堂々と鎮座する姿が。この組み合わせに、「なんだあれは?」と驚く人もいるでしょう。
仕掛け人は、明治43年創業の「菓舗 松陽軒」4代目の大竹保晴さん。老舗和菓子店として“しおがま”や“どら焼き”などを提供する一方で、スコーンを使った見た目にもインパクトのある“♯ZOKKONスコーン”を開発。SNSで話題となり、県内外からお客さんが訪れるようになったと話します。
“♯ZOKKONスコーン”が生まれたきっかけは、緊急事態宣言が発令されしばらくした2020年5月のこと。「和菓子店のお客さまの多くは高齢者です。来店だけでなく、デパートに卸していた分も売上が下がり、一時閉店も考えていました」と大竹さん。
修業時代に洋菓子の経験があったことから、いつか焼き菓子も販売したいと考えていたこともあり、ある日、「あんバターとスコーンを組み合わせたらどうだろう」とアイデアが降りてきたと言います。
最初は、とにかく見た目重視。その後、スコーンの材料の配分を研究し、完成したのが“♯ZOKKONスコーン あんバタープレーン“! 餡子は、和菓子店なので得意分野。スコーンの食感のバランスと、味の決め手のバターは“四つ葉バター”を採用。贅沢な組み合わせと、たっぷりの背徳感も相まって、6月の発売からあっという間に話題に!
「和菓子とは製造サイクルが違うので慣れておらず、当初は1日150〜200個作るのがやっと。来客が多すぎて、40年来使っていた自動ドアが壊れたってこともありました(笑)」と、当時を振り返ります。
左から、あんバター抹茶、あんバタープレーン、いちじくとクリームチーズほうじ茶のスコーン。
賞味期限は冷蔵で3日。冷凍でも購入できるので、ご相談を
「今では県外からもわざわざ買いに来てくださるお客さまもいらっしゃいますし、一緒に和菓子も売れるように。熊本土産として需要が出ているのも嬉しいですね」。一時は休業も考えた、老舗店の危機を救った“♯ZOKKONスコーン”。その背徳の味は、試してみる価値ありです。
「松陽軒」を代表するお菓子「しおがま」と、餡子がぎっしり詰まったどら焼き。“栗どらやき”は贅沢にもゴロリと和栗を一粒入れるのがこだわり
最後に、老舗店としてのこれからについて尋ねると、「夢は、町のお菓子屋さんとしてこれからも細々と続けていくこと。子どもだったお客さまが大人になって来店して『子どもの頃食べておいしかったから、また来ました』って言ってもらいたいんです」と大竹さん。奥さまのゆかりさんと二人三脚、これからも丁寧にお菓子づくりを続けていかれるお二人に会いにいくもの素敵な旅の思い出になるでしょう。
スポット名 | 菓舗 松陽軒 |
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住所 | 熊本県熊本市中央区魚屋町2-13 |
電話番号 | 096-353-2022 |
営業時間 | 8:30〜18:30 |
休み | 日曜 |
URL | 菓舗 松陽軒(Instagram) |
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今村ゆきこ
熊本生まれ、熊本育ち。地元タウン誌「タンクマ・モコス」を経て独立。熊本愛強めのライター&エディター。熊本第一号の温泉ソムリエ&温泉ソムリエアンバサダーとして「くまもっと湯美人」を監修するなど、温泉愛もかなり強め。コロナ禍でソロキャンプの魅力に気づき、休日には愛犬と「温泉+キャンプ」を楽しむ日々を送る。
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