祝・GI登録! “幻のそうめん”と名高い「南関そうめん」の魅力とは

熊本県北部の南関町で、300年以上にわたり作り伝えられている南関そうめん。2026年3月、地域の特産品を知的財産として保護する農林水産省の「地理的表示(GI)保護制度」(外部リンク:農林水産省)に登録されたことで、「くまもとあか牛」などと並ぶ熊本を代表する名産品として、ますます全国から注目が集まっています。
今回は、そんな南関そうめんの魅力に迫るべく、人気商品の購入が1年待ちとも言われる老舗「雪の糸素麺 猿渡製麺所」を取材。南関そうめんが食べられる町内のレストラン情報もあわせてお届けします。
目次
大戦中も暖簾を守った「雪の糸素麺 猿渡製麺所」
製造工程のすべてを機械に頼らず、一つひとつ手作業で仕上げる南関そうめん。大量生産が難しいことから高級品として扱われ、お祝いの席や来客時に振る舞われてきました。その希少性から「幻のそうめん」とも呼ばれています。江戸時代には、熊本藩主の細川氏が参勤交代の折に手土産として将軍家に献上していたと言われています。
最盛期の明治中期には200軒を超える製麺所があり、地域のいたるところですだれのように長く延ばしたそうめんを干す光景が見られていたそうです。食料統制の厳しかった第二次世界大戦中は、一時、製麺所が1軒のみとなりましたが、戦後復興を経て現在は10軒の製麺所が当時と変わらない製法で伝統を守り続けています。
戦時中であっても決して暖簾を下ろさなかった1軒。それがまさに今回訪れた「雪の糸素麺 猿渡製麺所」です。10代目店主として伝統を継承する師富慶太朗(もろどみ けいたろう)さんに南関そうめんの歴史や製造方法を教えてもらいました。

熊本市から車で約1時間。のどかな里山の風景が広がる南関町の中心市街地に、雪の糸素麺 猿渡製麺所はあります。店頭でも商品を購入することができ、近県をはじめ全国各地からそうめんを買い求める人が訪れます。

店名にもなっている「雪の糸素麺(写真左、6本入3300円)」と「曲げ素麺(写真右、5束入2400円)」。太さ0.5mm前後と、針の穴に通るほど細いそうめんを厳選した雪の糸素麺は公式ホームページからの注文のみ受け付けており、なんと注文から約1年待ちになるほどの人気商品です。

10代目店主の師富さんは、現在39歳。大学卒業後、熊本市の企業に勤めていましたが、30歳の頃に南関そうめんの名人と言われた祖母・井形朝香さん(9代目店主)に弟子入りし、技を継承しました。

店内に飾られた、9代目店主・井形朝香さんの写真。「子供の頃、よく学校帰りにそうめんのふし(麺を作る時にできた切れ端)を使ったおやつを食べさせてくれました」と師富さんは思い出を語ります。
2日間の工程を経て、白糸のような麺を作り出す
南関そうめんの製造は全10工程に分けて手作業で行われます。小麦、水、塩のみで生地を作る「(1)だごこね」という工程から、生地を切り分ける「(2)回し切り」、麺の形により上げる「(3)中より」「(4)より上げ」、生地を寝かせる「(5)寝かせ」を経て、熟成させながらそうめんの形に作り上げていく「(6)掛巻」「(7)小引」「(8)箸分け」、麺を乾燥させる「(9)干し」、仕上げの「(10)束ね」まで。以上を計2日間かけて行います。
実際の工程を見せてもらいました。

熟成させた生地を円形に延ばし、小刀で渦巻状に切っていく「(2)回し切り」の工程。

「(3)中より」「(4)より上げ」の工程でよりをかけて細く延ばした麺は、この状態で一晩寝かせます((5)寝かせ)。

「(6)掛巻」の工程で掛端という2本の竹棒に麺を8の字状に掛け、室(むろ)という箱の中で熟成。その後、「(7)小引」という工程で、うどんぐらいの細さまで麺をゆっくり引き延ばし、さらに熟成させます。

続いては「(8)箸分け」という工程。小引した麺を箸でかき分けながら、さらに細くしていきます。

箸分けで麺はそうめんの細さになります。長さは約2メートル。

箸分けが終わったら、「(9)干し」の工程です。天気がいい日は天日干し、雨の日は木炭の火を利用し室内で乾燥させます。

まるで生糸を垂らしたカーテンのような美しさ。

半乾きの状態で一度取り入れ、曲げ枠という道具に巻いていきます(⑩束ね)。再度天日干しにして乾燥させたら「曲げ素麺」が完成です。

南関そうめんはそれぞれの製造所が手作業で仕上げるため、各製麺所の個性がハッキリと表れます。「雪の糸素麺 猿渡製麺所」の麺はほかと比べて特に細く、国産小麦の香りが豊かなのが特徴です。ちなみに、写真の「曲げ素麺」は丁髷(ちょんまげ)に似ていることからその名前がつけられたそう。

店内に飾ってある書簡。書かれた年代は不明ですが、明治〜昭和期に活躍した熊本県出身のジャーナリスト・徳富蘇峰から評判を聞いた熱海の老舗旅館が、雪の糸素麺を仕入れていたことが伺えます。

師富さんは南関町関素麺製造業組合の副組合長も務めており、組長の綾田さんとともに、GI保護制度登録に向けて取り組みました。
「一本ずつ手で延ばし、気温や湿度を見極めながら仕上げていく南関そうめんは、決して効率的なものではありませんが、この手仕事こそが南関そうめんの本来の価値であると考えています。GI保護制度への登録をきっかけに、ぜひみなさんに南関そうめんができるまでの工程を知っていただいたうえで、美味しさを味わっていただければと思います」と師富さんは思いを語ります。
スポット情報(2026年7月3日現在)
| スポット名 | 雪の糸素麺 猿渡製麺所 |
|---|---|
| 住所 | 玉名郡南関町関町1417 |
| 電話番号 | 0968-53-2106 |
| 営業時間 | 9:30〜16:30 |
| 関連サイト | 雪の糸素麺 猿渡製麺所(外部リンク) |
地域に愛される老舗レストランで、ほっこり「温麺(にゅうめん)」を味わう
続いては、南関そうめんを使ったメニューを味わえる、南関町の飲食店をご紹介します。

1つめは、南関町役場の目の前にある「レストラン松風」。創業72年の老舗レストランで、750種類以上のオリジナルパフェを提供していることから、“日本一パフェの種類が多い店”としても知られています。(2026年6月現在、一時的にパフェのメニュー数を減らして営業しています)
「オムカツカレー」や「チキン南蛮」など食事メニューも充実している同店ですが、創業から続くメニューとして南関そうめんを使った「温麺」も人気です。

温かい南関そうめんに、同じく町の名産品である南関あげ※、エビ、椎茸、かまぼこ、柚子をトッピング。鰹節と昆布から丁寧に出汁をとった優しい味わいのツユは、創業当時と変わらない味です。
※「南関あげ」とは、水分を極限まで飛ばして作られる、長期保存が可能なサクサクとした乾燥油揚げのこと。

ふわふわの食感と、滑らかな舌触りが楽しめます。

根強いファンが多いスイーツメニューもぜひ。50年ぶりにメニューに復活した「プリンアラモード」がイチオシです。創業当時と変わらない昔ながらの“固めプリン”の上に、バニラアイスや季節のフルーツ約9種類をトッピング。少し塩味の効いた自家製カラメルソースがクセになる味わいです。

レトロな雰囲気が魅力の店内。南関そうめんや南関あげもレジ横で販売しています。
スポット情報(2026年7月3日現在)
| スポット名 | レストラン松風 |
|---|---|
| 住所 | 玉名郡南関町関町1498-4 |
| 電話番号 | 0968-53-0273 |
| 営業時間 | 11:00〜20:00(パフェLO17:00、料理LO19:30) |
| 定休日 | 水曜(その他臨時休あり、要確認) |
| 関連サイト | Instagram(@matsukaze.nankan)(外部リンク) |
特産品や地場産野菜の料理を味わえる、直売所併設の食事処
続いて紹介するのは、南関町の特産品が揃う直売所に併設している「うどん処 関所亭」。

江戸時代の商家を再現した建物の中で、南関そうめん・南関あげや、地元産の野菜を使った料理を味わえます。

「冷やし素麺(1,300円)」。竹製麺所をはじめ、南関町関素麺製造業組合に加入している製麺所の南関そうめんを使用。製麺所によって個性(太さや食感)が異なるため、その都度ゆで時間や締め方を調整しているそうです。
この日は竹製麺所の麺でした。細く繊細ながら、しっかりとしたコシのあるそうめんを、鰹、昆布、いりこから出汁をとった少し甘めのツユにつけていただきます。薬味は、甘く煮た千切りの南関あげと、ネギ、生姜の3つ。

南関あげがたっぷりのった「南関あげ丼セット(850円)」もおすすめ。丼で使用している南関あげは、地元・塩山食品のもの。1時間かけてしっかり油抜きをしたあげを、甘めのツユで2時間炊き、さらに一晩寝かせてから調理・提供するという手の込みよう。ほかのあげにはないふわふわ・もちもちの食感がたまらない逸品です。

地元の野菜をメインに使った漬物(3種類)が取り放題といううれしいサービスも。土日はお休みのためご注意ください。
スポット情報(2026年7月3日現在)
| スポット名 | うどん処 関所亭 |
|---|---|
| 住所 | 玉名郡南関町上長田654 |
| 電話番号 | 0968-53-6288 |
| 営業時間 | 11:00〜14:00(LO) |
| 定休日 | 土日(祝日は臨時休あり、要確認) |
| 関連サイト | Instagram(@sekisyotei)(外部リンク) |
SUGA-edit
東京と静岡での出版社勤務を経て、2022年秋から故郷・熊本で編集者兼ライターとして活動。
観光・グルメ情報や移住情報サイトの記事などを手がけるほか、首都圏の企業等のオウンドメディアの制作も行う。





