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パンフレット

旅のおすすめ記事最新トレンドから絶対外せない王道まで!熊本の楽しみ方をご紹介します

熊本のお土産に!頼れる酒屋3選

中城明日香

熊本市エリア おみやげ・買い物 焼酎 地酒
写真:テーブルの上に置かれた緑と赤のボトル

喜ばれるお土産といえば、地酒もそのひとつ 。阿蘇や九州山地の伏流水が大地を潤す熊本は、お酒の原料であるお米と水に恵まれた土地でもあります。そんな恵まれた風土で育まれた地酒を取り扱う酒屋さんは、地域のことを知るには最適なスポットです。 お酒を好きな人も、そうでない人も、足を運べば地域をグッと身近に感じられる、個性ゆたかな熊本の酒屋さんをご紹介します。

  • 川上酒店
  • くまもと旬彩館さくらLIQUOR /くまBAR
  • いのもと酒店

地酒を通じて人と地域をつなぐ。開かれたコミュニティの場

川上酒店
写真:川上酒店の外観

市電「呉服町」から徒歩3分。古くからの街並みに溶け込むように佇む「川上酒店」。店主の川上靖(かわかみやすし)さんは、祖父が立ち上げた酒屋を30年前に復活させると、当時からまちづくりにも積極的に携わってきました。現在は唎酒師 (ききざけし)である靖さんと、ワインソムリエの資格を持つ千恵(ちえ)さんとともに夫婦で酒屋を切り盛りしています。

写真:店内にはいろんな種類のお酒が並べられている

住居兼倉庫として使っていた町屋をリノベーションした店内には、県産の焼酎や日本酒を中心に、ワイン、ウイスキーがずらり。小上がりを囲むように広がるコの字型の土間空間は、店舗でありながら地域のコミュニティを維持することを目指しています。それは、お酒を通じて地域コミュニティを繋いでいきたいと活動する川上さんの姿勢そのものです。

写真:川上さん夫妻

「熊本は、自然が豊かでお酒の原料となる米も豊富な地域です。そうした恵まれた環境で作られてきたのが熊本のお酒。原料となるお米の炊き立ての香りを知っているからこそ、感じ取ることができる繊細な香りと味がありますし、それをどんな人たちが、どんな風に大切に作り上げ、守り継いできたのかを知ることも興味深いものですよ」と川上さんは語ります。
 

■全国の酒づくりの礎を築いた熊本の杜氏たちの熱き志

明治時代に熊本の風土にあった酒づくりをしようという取り組みを行う中で、“酒の神様”と謳われる野白金一(のじろきんいち)氏によって発見された「熊本酵母」は、今や全国の名だたる吟醸酒のルーツとなっています。その当時に熊本で考案された冷却タンクの基礎も、蔵元さんたちは「全国の作り手に教えたいから」とあえて特許を取得しなかったというエピソードからも、熊本の作り手たちの人情が浮かび上がります。

写真:箱の中に入っているお酒

「熊本は焼酎のイメージが強いかもしれませんが、焼酎も日本酒も、ワインもウイスキーもある珍しい地域です。それにまつわる興味深いエピソードはたくさんあるんですよ」と川上さん。店を訪れる方には、1本のお酒に秘められたエピソードをはじめ、熊本という地域の成り立ちや、熊本という風土を生かしてお酒をつくり続けている蔵元さんの話など、“熊本ならではの自慢話”として時間の許す限り伝えているそうです。

写真:熊のイラストが描かれた酒瓶

球磨焼酎案内人でもある川上さんにセレクトしていただいたのは、「林酒造場」の銘酒「極楽」(1,870円)。熊が描かれた、ユニークなエチケット(ラベル)が目を引く“KUMA”EDITION。1682年から受け継がれる球磨焼酎の豊かな味わいと濃醇な香りが楽しめる1本です。「実はこのエチケットは海外向けに作られたものですが、コロナでお蔵入りになってしまったのでうちで引き取らせてもらったレアな1本なんですよ」。

■蔵元や地域の垣根を超えて生まれた球磨焼酎の未来

写真:机の上に4本並んだボトル

こちらは2024年に誕生した「KUMA SPIRIT AND BOTTLERS」のシリーズ。球磨焼酎の蔵元である「林酒造場」と「深野酒造」が蔵の垣根を超え、貴重な銘柄をブレンドしたボトラーズ球磨焼酎。2つの蔵の焼酎をブレンドし、新たな球磨焼酎の世界を見せてくれたのは、東京に拠点を構えるレモンサワー専門店「OPEN BOOKS」の田中開さん。  
写真は左から順に、“直燗(じきかん)”と呼ばれる人吉球磨地方特有の飲み方に適した「直燗」(3,960円)、ふくよかな香りと米の旨みを味わう「ハーモニー」、玄人向けの濃い味わいの「クロウト」、芳醇な香りを楽しむ「アロマティック」(各2,750円)まで再編集された球磨焼酎が注目を集めています。

写真:店内にはドライフラワーも飾られています。

「“生まれ育った街が好き”という気持ちを出発点に、酒屋の仕事をしています。お酒を通じて長い目で地域を見守りながら、“地域が良くなるってどういうことだろう?”といつも考えています。1日のうち10分だけ、自分の時間を地域のために使えば、地域や人が良くなるならその方がいい。ここはそんな地域への想いを持ち寄る場でもあるんです」。そう語る川上さんの元から手渡されるお酒は、そのどれもが人々の心を豊かにする1本です。

スポット情報(2024年9月20日現在)
スポット名 川上酒店
住所 熊本市中央区万町2−3
電話番号 096-326-1568
営業時間 月〜土曜9:00〜19:00  日曜10:00〜17:00
休み 不定 
備考 ※詳細はインスタグラム @kawakamisaketen(Instagram)、もしくはお電話にて

 

酒屋と角打ちの最強コラボ! 飲み比べができる県産酒専門店

くまもと旬彩館さくらLIQUOR /くまBAR

交通アクセスの拠点でもある「SAKURA MACHI Kumamoto」の地下1階にある県産酒専門店「くまもと旬彩館さくらLIQUOR /くまBAR」。酒屋の一角にある角打ちは、バスターミナル直結の好立地と、自慢の県産酒を手頃な価格帯で味わえることから、0次会に利用する方も多い知る人ぞ知る穴場です。

写真:くまBARの店内の様子

県産の焼酎をメインにワイン、日本酒、ウィスキーなど取り扱っています。なかでも球磨焼酎は27蔵を網羅しており、店頭に並んでいるお酒のほとんどは角打ちで味わうこともできるため(500円〜1,650円)、観光客から地元の常連さんまで幅広い層に親しまれています。

写真:木樽の量り売り

店内中央には、木樽仕込みの焼酎の量り売りも。ここでしか出会えないレアな焼酎は、ボトル付き(720ml)で1,500円(※オリジナルボトル料金込み)。マイボトルを持参すれば、欲しい分だけ購入ができます。
 

写真:コップの中に入ったお酒と酒瓶

酒屋と角打ちともに評判の高い1本は、木樽仕込みの「鴨の舞」。バナナのようなフルーティな香りが特徴で、お米の焼酎が苦手な方にも飲みやすいと好評です。そのほかシンガポールで2017年に「にっぽんの宝物 JAPANグランプリ」で最優秀賞に選出された日本最古とも言われるお茶・相良茶 と瑞鷹酒造の日本酒「菜々(さいさい)」をトニックウォーターで割った「Chaニック」(500円)もここでしか味わえない貴重な1杯です。
 

■好奇心の赴くままに球磨焼酎を飲み比べ

写真:3種飲み比べセット

角打ちで味わえるお得な「球磨焼酎3種飲み比べ」(770円)は、樽熟成、減圧蒸留、常圧蒸留の3つの製法から好みの銘柄をセレクトできます。それだけでもお得感満載ですが、なんとおつまみは持ち込み自由(!)という太っ腹振りに驚かされます。
 

写真:店長の高瀬さん

「飲み比べをするなら、まずは飲みやすい減圧蒸留から挑戦するのがおすすめ。気になる銘柄を片っ端から制覇して、お気に入りの1本を見つけてください!」と豪快な笑顔を見せるのは、店長の高瀬素代香(たかせそよか)さん。「お酒を心ゆくまで味わってほしい」という思いがひしひしと伝わってくる空間です。
高瀬さんのお気に入りは「人吉の高橋酒造さんがつくる、梅とデコポンのリキュールの『うめぽん』です!」とのこと。 お酒に対する知識は幅広く、肩肘張らずに楽しめるところが魅力です。
 

■どら焼きと人吉産抹茶?!角打ちで食す、甘味セット

写真:お茶とどら焼き

「相良茶を使ったドリンクを考案しようと思ったのですが、そのまま飲むのが美味しすぎたので(笑)、飲めない方向けにお抹茶を立てることにしました」と高瀬さん。相良茶を使った抹茶と、隠し味に赤酒を使った焼きたてのどら焼きを味わえる「Cha Chaセット」(400円)も隠れた名品です(※茶葉がなくなり次第終了)。

写真:袋に入ったどら焼き

どら焼きは、隣接するどら焼き専門店「どらがしあんあん」の「つぶあん」を提供しています。熊本県産の米粉と小麦粉、国産たまご、隠し味に赤酒を使用したフワフワもっちりな食感の生地と、甘さ控えめの北海道十勝産のつぶあんが好相性。満足感はあるけれど罪悪感のない小さめのサイズ感も人気の秘訣です。

写真:グラスに入った球磨トニック

「くまBAR」では、約35種の球磨焼酎の中から好みの銘柄を選んでトニックウォーターで割った「球磨トニック」(600円)をはじめ、季節に合わせた限定メニューも登場します。

写真:SLのボトルに入ったお酒

そのほか酒屋エリアでは、観光客に喜ばれるデザインボトルもそろい踏み。中でも人気の「SL人吉」「かわせみ」「やませみ」の心踊るデザインは、飲んだ後も飾っておきたくなるシリーズです。他にも見た目や味、どちらで選んでも喜ばれる熊本の地酒が揃っているので、お土産選びに困ったらぜひ足を運んでほしいスポットです。

スポット情報(2024年9月20日現在)
スポット名 くまもと旬彩館さくらLIQUOR /くまBAR
住所 熊本市中央区桜町3−3−10 SAKURAMACHI  Kumamoto地下1階
電話番号 096−300−8111
営業時間 店舗/10:00〜21:00(イートイン 平日15:00〜20:00、土・日曜、祝日13:00〜20:00)
休み 無休

 

50年の歴史を誇る酒屋が愛され続ける理由とは?

いのもと酒店
写真:いのもと酒店の外観
写真:いのもと酒店の入口には杉玉も。

平日にも関わらず、朝10時の開店と同時にひっきりなしにお客さんが訪れては、大事そうにお酒を胸に抱えて帰って行く人たち。その心地よい空気感は、この場所に軽やかで確かなコミュニティがあることが伝わってきました。「いのもと酒店」は、2024年に50周年を迎えるという老舗酒店。その歩みは決して平坦ではなかったと言います。それでも今なお愛され続ける理由が知りたくて、店主の猪本順子(いのもとじゅんこ)さんを訪ねました。

写真:壁一面に並んでいるお酒

店内は、全国各地の作り手たちが手がけた稀少なお酒がひしめき合っています。「“熊本でうちのお酒を広めてね!”と励ましの言葉をくださる蔵元さんたちが手がける大切なお酒ばかりです。どういう方が、どういう想いで、どういう風土の中でその1本を紡いできたのか。その背景を丁寧に伝えるようにしています」と順子さん。

写真:店主の猪本さん

酒屋さんの50年の歴史を振り返ると、スーパーやディスカウントストアの登場によって価格競争の波に飲まれ、変化を余儀なくされた時代も。ご両親が苦労する姿をいつも間近で見ていた順子さんは、すぐに家を継ぐ気にはなれず30才の時に上京。PR会社で10年間の経験を積んだのち、帰熊して代表に就任すると、東京での経験を糧に、お酒の可能性を広げるさまざまな試みにチャレンジしてきました。
たとえば、東日本大震災の際には自粛ムードが続く中、取引のある東北の蔵元と連絡を取り、被害状況をまとめた動画を制作。被害状況を伝え、お酒を通じた支援を呼びかけました。また、ある時は熊本のイタリアン、日本食、寿司のシェフで紡ぐ特別なコース料理と、日本酒とワインのペアリングを企画。ジャンルの垣根を超えたコラボレーションが話題を呼んだそうです。

写真:店内のテーブルの上に置かれたお酒

お酒を起点に人と人、人と地域をつなぎ、ご縁を広げてきた順子さんにおすすめの1本をセレクトしてもらいました。1本目は、玉名郡和水町にある「花の香酒造」の人気銘柄「産土(うぶすな)」。“産土”とは、その土地の神さまを意味する言葉。花の香酒造は「土着の環境と文化を守りながら“ここにしかない最高の酒づくりを目指す”」という哲学の元、馬耕栽培や1本掌植をはじめとする昔ながらの製法を“12農醸”と独自に称した酒づくりに取り組んでいます。「産土2023 穂増 五農醸 Fuchinsai」(3,800円 ※すでに完売)の首にかけられたラベルは、12農醸に則した生産背景が表現されています。

写真:産土の赤いボトル


また、産土の赤いボトルは2024年に50周年を迎える「いのもと酒店」のために仕込んだ、熊本在来の稲の品種「香子(かばしこ)」と「穂増(ほませ)」をブレンドした貴重な1本(※すでに完売)。熊本は、「花の香酒造」と「亀萬酒造」のほか、全国9蔵と周年記念のお酒をリリースしたとか。まさにそれぞれの蔵元とお酒を通じて紡いできたご縁の象徴です。

写真:箱入りの米焼酎「球磨川」

こちらは、2020年7月に発生した人吉の豪雨災害で大きな被害に遭った「大和一酒造元」が手がける米焼酎「球磨川」(1,870円)です。被災後、氾濫した球磨川によってもたらされた蔵付きの酵母菌、いわば「球磨川酵母」の力を信じて自然発酵させた球磨焼酎です。原料は、人吉球磨産の玄米と玄米麹のみ。潔い1本は、人々の自然と共生する力を想起させます。

写真:「泰斗 純米吟醸」

最後にご紹介するのは、「千代の園酒造」が手がける「泰斗 純米吟醸」(1,634円)です。これはかつて熊本の酒屋さんたちが時代の変化の波を乗り越えようと手を取り合った「くまもと酒文化の会」がきっかけとなって生まれた1本。実は、順子さんのお父さまが初代を担っていたとか。地域に生きる酒屋さんの原点を体現するかのよう。同会はすでに解散していますが、その思いは今も大切に受け継がれています。

写真:店内に並べている各種お酒

「お酒は力水(ちからみず)と呼ばれるように、明日へのエネルギーを培うものです。縁や絆をつなぎ、人生の引き出しを増やしてくれるものです。人が集う場、そこにはいつも“お酒が真ん中”にあります」。そう語る順子さんの言葉の向こうに、1本のお酒が紡ぐカラフルなご縁が浮かび上がります。

スポット情報(2024年9月20日現在)
スポット名 いのもと酒店
住所 熊本市東区帯山4−56-15
電話番号 096−382−8088
営業時間 10:00〜20:00、日・祝日10:00〜18:00
休み 水曜

 


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中城明日香

大分県生まれ、熊本市在住の編集者・ライター。
地域の出版社・編集プロダクションを経て、独立。

自然、暮らし、農業、教育、観光、ファッション、アートなど、“毎瞬”を楽しむ姿勢で幅広いジャンルの記事を手がける。仕事もプライベートも書くことが生業。

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