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パンフレット

旅のおすすめ記事最新トレンドから絶対外せない王道まで!熊本の楽しみ方をご紹介します

球磨焼酎を、現地『人吉・球磨』で知り、楽しむ旅

中川千代美

県南エリア おみやげ・買い物 醸造所 焼酎
写真:小さなサイズのお酒の瓶

約500年もの歴史を持つ、人吉・球磨地方で生産された米焼酎「球磨焼酎」。熊本県内で球磨焼酎を楽しめたり購入したりできる場所は多くありますが、せっかくならば生産地でその価値を知り、楽しみたいものです。どのような土地でどのように生まれたのかを五感で感じれば、きっとその一献の味わいももっと深くなるはず。生産地で楽しむ球磨焼酎巡りの魅力をご紹介します。

・そもそも、「球磨焼酎」って?
・球磨焼酎蔵ツーリズム 体験プラン
・一期屋
・蔵元訪問「常楽酒造」

そもそも、「球磨焼酎」ってどんな焼酎? 何がすごいの?

熊本が誇る銘酒の一つ、米焼酎の「球磨焼酎」(くましょうちゅう)。
熊本県の南部に広がる人吉・球磨地方の名産品で、スコッチ、コニャック、ブランデーなどと並び、世界貿易機構(WTO)加盟国が保護するGI(地理的表示)指定を受け、生産地の土地名を冠することができるブランドの一つです。国内はもちろん国際的にも名称が保護されており、その品質の確かさを世界に向けてもアピールできる存在です。

そんな球磨焼酎にどのような価値、魅力があるのか、そしてどのような歴史を持つのか、話を聞きに伺ったのは、球磨焼酎の蔵元の一つ「大和一酒造元」。こちらの3代目である代表の下田文仁さんは「球磨焼酎酒造組合」の副理事長でもあります。そこで、「球磨焼酎とは」について詳しく教えていただきました。

写真:「大和一酒造元」。3代目の下田文仁さん

 球磨焼酎とは、人吉球磨産をはじめとした国産の米と麹、そして人吉球磨地域の水で作った焼酎とされています。

 「実は米焼酎が、日本における最も古い焼酎とされているんですよ」と下田さん。
歴史を遡ること1546年、日本に滞在していたポルトガル商人のジョルジュ・アルバレスがフランシスコ・ザビエルに宛てた手紙の中に、「日本には、米からできたオラーカ(蒸留酒)および身分の上下を問わず皆が飲む飲み物がある」との記述があり、当時、米の蒸留酒・つまり米焼酎は身分が高い者しか口にできないお酒だったということを示しているとされているそうです。
しかも、このレポートが現在の鹿児島県指宿市で書かれていることから、この頃には九州南部で米焼酎が作られ、球磨焼酎もその一部であったと考えられているといいます。

その後、1795年にサツマイモが伝来し、九州で余剰のお米が採れない地域では芋焼酎なども作られ始めますが、人吉球磨地方ではずっと変わらず米焼酎が作られ続けました。それは、全国屈指の清流・球磨川と米作りに適した地形の人吉盆地という恵まれた立地の中で、良質な米が豊富に採れていたからです。球磨焼酎は、人吉球磨地域の土地の豊かさの象徴でもあるようです。

写真:森展望公園から見下ろす町の景色

このように、500年以上にわたって人吉球磨で作られ続けている球磨焼酎。現在は球磨川に沿うように27の蔵元(1ヵ所は豪雨被災により休業中)があり、それぞれの蔵で様々な銘柄の球磨焼酎が生み出されています。

「球磨川の美しい流れや広大な人吉盆地の空気を感じてもらうと、より一層、焼酎がおいしく感じられると思います」と下田さん。途中に立ち寄った妙見野自然の森展望公園(多良木町)からの景色は、その自然の魅力を物語るかのよう。
 

写真:「ガラチョク」と呼ばれる酒器

そして、「本場」ならではのおいしい飲み方を知ることができるのも魅力だと、下田さんは語ります。

例えば、「ガラチョク」と呼ばれる酒器(ガラ=容器、チョク=おちょこ)で、直火で燗つけしてちびちび楽しむ飲み方も、その一つ。他にも、小さなおちょこ「チョク」の宴席での風習・礼儀など、独自の文化に触れるのも趣深い時間です。

写真:お酒の瓶を持つ下田さん

「あれこれと語るよりも、『本場』で景色や風土、文化に触れていただけると、球磨焼酎の魅力を一気に感じていただけると思います。令和2年7月豪雨で被害を受けた蔵元も多くありましたが、皆、そこから立ち上がり、また逞しく美味しい焼酎を造り続けています。ぜひ、人吉球磨でいろんな体験をしながら、いろんな蔵元の球磨焼酎の魅力に触れていただきたいですね」と下田さんは、熱く語ってくれました。

▼球磨焼酎酒造組合ホームページはこちら
https://kumashochu.or.jp/

大和一酒造元
写真:大和一酒造元の外観
写真:店内の様子

下田さんが代表を務める「大和一酒造元」は、明治31年より焼酎造りを始めた、歴史ある蔵元です。元々、温泉が湧く立地だったことから、温泉水を使った「温泉焼酎 夢」や、牛乳焼酎「牧場の夢」などを造っています。

写真:球磨焼酎の「球磨川」

令和2年7月豪雨災害からの復活の折、被災時に球磨川が運び蔵に着いた天然の酵母と、球磨焼酎の原点に立ち返るという意気を込めて、「球磨川」という商品を開発。玄米を使った自然発酵という明治期までの昔ながらの製法で作られています。香ばしくやさしい風味が特徴です。

写真:パネルを使って説明をする下田さん

また、「大和一酒造元」では、「焼酎蔵ガイドツアー」〈参加費(1名):飲み比べあり1,500円、飲み比べなし1,000円〉も行われています。校舎のような「教室」で球磨焼酎の歴史や知識を学び、蔵見学をして飲み比べを行える贅沢なツアーで、1名から予約可能(事前予約)です。

スポット情報(2024年7月19日現在)
スポット名 大和一酒造元
住所 熊本県人吉市下林町2144
電話番号 0966-22-2610
営業時間 8:00~17:00
休み 日・月曜
駐車場 あり
URL 大和一酒造元
備考 焼酎蔵ガイドツアーは事前予約が必要。申し込みはこちらから

Webで好みの内容や蔵を選んで予約! 球磨焼酎を深く楽しむ体験

「球磨焼酎蔵ツーリズム」体験プラン
写真:釜のお酒を混ぜている女性

「現地で球磨焼酎をじっくり体験できるような旅行をしたい」と思っても、何をどう探せば良いのか分からない場合も多いと思います。

そんな方にぜひ、オススメしたいのが、「球磨焼酎蔵ツーリズム」の体験です。

写真:瓶にラベルを貼る様子
(※)

「ただ蔵元を訪問するだけでなく、より深い体験を通じて球磨焼酎の魅力を感じてほしい」との思いから、13の蔵元と旅館、地元鉄道会社などで立ち上がった「球磨焼酎蔵ツーリズム協議会」による体験アクティビティです。

写真:麹を混ぜる様子

こちらのツーリズムは、ガイドツアーのように蔵を回るのではなく、自分で好きな蔵元・お店やそのアクティビティの内容を選んでプランを申し込み、自分で赴きます。

申し込み方法もWebサイトからで、自由旅行が増えている現代の旅行スタイルにも合った内容です。
いずれも有料体験プランで、「飲み比べ体験」「熟成体験」「ガラチョクでの飲み方講座」「マイブレンド体験」「仕込み体験」など、それぞれ、かなり趣向が凝らされた内容になっています。

写真:酒蔵の説明を聞く様子
写真:蔵で作られたお酒を試飲

球磨焼酎にもう一歩踏み込んだ、特別な蔵元体験を楽しみたい方は、ぜひ「球磨焼酎蔵ツーリズム」の有料体験プランを選んでみてはいかがでしょうか?

写真:ラベルにハンコを押す様子
(※)印以外の写真は「球磨焼酎蔵ツーリズム」提供
スポット情報(2024年7月19日現在)
プラン名 球磨焼酎蔵ツーリズム
申し込み方法 予約ページより、好みの体験プランを選んで申し込んでください
料金 プランによって異なります
問い合わせ 球磨焼酎蔵ツーリズム協議会事務局
電話番号 0966-22-2374(「一期屋」内)
URL 球磨焼酎蔵ツーリズム協議会

全蔵元の球磨焼酎が一ヵ所に揃う! 試飲や量り売りも

一期屋
写真:一期屋の外観

人吉市の老神神社近くにある、1軒の蔵のような店舗。ここ「一期屋」では、数多ある球磨焼酎から、自分に合う1本をしっかり吟味することができます。

写真:一期屋の店内の様子

店内に揃うのは、全27蔵元(1ヵ所は豪雨被災により休業中)から集った、豊富な銘柄の球磨焼酎です。「一期屋」は明治30年に酒類の卸問屋として創業。その繋がりなどを生かし、現在は球磨焼酎の小売販売も行っています。各蔵から直接仕入れるものもあり、定番のものから限定品、レアな銘柄まで、幅広く揃っています。

写真:店内には多数のお酒が

「こんなにたくさんあったら、何をどう選べばいいのか分からない」と思われるかもしれませんが、心配ご無用! 球磨焼酎初心者でも選びやすいような商品レイアウトにこだわっています。

球磨焼酎は、昔ながらの製法「常圧蒸留」、比較的新しい方法で現在主流になっている「減圧蒸留」の2つの蒸留方法で造られています。さらに、原酒を樽で熟成させる「樽熟成」もあり、これらをタイプ分けして配置してあるのです。

「常圧蒸留」のものは、薫りとコクが濃厚な「リッチタイプ」、「減圧蒸留」のものは飲みやすく香りが華やかな「ライトタイプ」と「フレイーバータイプ」、「樽熟成」はウイスキーのような「キャラクタータイプ」と、味の特徴が分かりやすいように4つに分類されているので、安心。同じ米焼酎でも、こんなに風味がたくさんあるんですね…!

「球磨焼酎案内人」に認定されている店員さんが、そこからヒアリングして好みに合う商品を探してくれるので、しっかり銘柄選びを楽しめます。

写真:果樹酒の種類もたくさん

さらに、果実をつけ込んだリキュール類も豊富です。特に梅酒は、通常だとホワイトリカー系のお酒に漬け込むのが一般的ですが、人吉球磨地域では伝統的に球磨焼酎で漬け込みます。梅などの果実の味がしっかり出て香りも豊かになるとのことで、甘いお酒が好きな人に人気なのだとか。

また、最近は、米を原料としたウイスキーやクラフトジンを造る蔵元もあり、品数も増えています。球磨焼酎が誇る多彩な魅力を、しっかり見ることができます。

写真:樽から直接瓶に注がれるお酒

量り売りで購入できる球磨焼酎も約10銘柄揃います。店内に売ってある瓶に入れてもらうこともできますが、手持ちの容器に注いでもらうことも可能だそうです。なんだかワクワクしてしまうシーンです。

写真:飲み比べができるコーナー

また、「しっかり飲み比べて、自分の舌で確かめたい」という方には、こちらの試飲コーナーを。1杯110円の専用コインを購入し、小さなカップで一口試飲ができるコーナーです。30種以上の球磨焼酎から、飲み比べることができます。

写真:「3種飲み比べ体験」

もう少ししっかり飲み比べたい場合は、「3種飲み比べ体験」(1名1,000円)を。それぞれの味のタイプからお店がセレクトした3種の球磨焼酎を30mlずつ楽しめます。

写真:ラベルを貼る様子

さらにさらに、もっとスペシャルな1本を手に入れたい方には、「ラベル作り体験」〈参加費(1名):2,200円、試飲、および360mlの球磨焼酎ボトル1本含む、事前予約推奨(お電話にて)〉も人気です。4タイプの焼酎から飲み比べで好みの1本を選び、好きに描いたラベルを貼って、世界に1本だけのボトルをつくることができます。メッセージを入れて、お土産にするのもオススメです。

写真:店内で売られている酒器
写真:くまモンのラベルが貼られているお酒も

球磨焼酎ならではの酒器「ガラチョク」やくまモン柄の酒器なども揃う同店。球磨焼酎をより堪能するための情報も教えてくれるので、焼酎好きな人はぜひ立ち寄りたいスポットです。

スポット情報(2024年7月19日現在)
スポット名 一期屋
住所 熊本県人吉市新町155
電話番号 0966-22-2374
営業時間 10:00〜18:00
休み 水曜
駐車場 5〜6台
備考 バスも駐車可能です(事前にお知らせを)

樽熟成や果実系など、種類の豊富さが魅力の蔵元

常楽酒造
写真:常楽酒造の外観

さて、せっかくなので球磨焼酎の蔵元を訪問したいと伺ったのが、球磨郡錦町にある「常楽酒造」。国道から山手の方に少し登った場所にある、広い敷地を持つ蔵元です。

写真:常楽酒造の店内

敷地内には直売所もありますが、驚くのはその種類の豊富さ! 一つの蔵でこんなにもたくさんの銘柄が造られるのかと、驚いてしまいます。

写真:たくさんの銘柄が並ぶ店内
写真:窓辺に並ぶお酒

「常楽酒造」は大正元年創業の蔵元で、地域でもいち早く樽貯蔵の球磨焼酎を製造・販売しはじめた蔵でもあります。「秋の露 樽」をはじめとした樽貯蔵の銘柄に加え、フルーツの里でもある錦町の地の利を生かした、果実を漬け込んだリキュール類や、地元産ヨーグルト「球磨のめぐみ」で造ったヨーグルト焼酎など、バリエーション豊富。減圧蒸留、常圧蒸留、樽醸造の全ての製法の商品がそろい、黒麹や黄麹を使ったもの、10年以上醸造した古酒など、とにかく種類豊富で、見れば見るほど魅力的です。

写真:ウイスキー

さらに、最近はライスウイスキー「常楽」の製造もスタート。樽貯蔵焼酎とはまた違った風味を楽しめます。

写真:試飲も可能です

直売所中央のテーブルで試飲も可能なので、しっかり見比べ、飲み比べながら吟味できますよ。

写真:蔵のなかも見学可能

また、事前に申し込みをしていれば、蔵の見学も可能です(電話にて、前日までに申し込みを)。杜氏さんの案内の元で、製造の現場を見ることもできます。こちらは、常圧・減圧両方に対応している蒸留の機械。

写真:お酒ができる様子も確認できます

麹からぷくぷくと気泡が出る様子も見えます。

写真:発酵をしているお酒の様子

二次仕込みの様子。米を加えて発酵させていきます。ここまでも数日かかる作業だそうです。この工程の後に蒸留され、熟成へと進みます。

写真:樽がいっぱい並ぶ蔵の中

そして、「常楽酒造」の蔵見学で見逃せないのが、樽熟成庫の見学です。見渡す限り、約750本の樽が並ぶ様子が圧巻です。新しいものから長期にわたって熟成されているものまであるそうです。

写真:蔵の様子

樽1本1本を見ながら歩くだけでも、気持ちがワクワクと高まります。貯蔵庫の雰囲気を全身で体感した後で、樽貯蔵の球磨焼酎を飲むと、感じる味わいも大きく変わりそうです。

スポット情報(2024年7月19日現在)
スポット名 常楽酒造
住所 熊本県球磨郡錦町一武2577-13
電話番号 0966-38-4371
営業時間 9:00〜16:00
休み 土・日曜
駐車場 あり
URL 常楽酒造


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中川千代美

長崎生まれ、熊本在住。地方出版社に勤めたのち、「チヨミ編集事務所」として独立。地域の子育て情報誌や生活情報紙をはじめ、幅広いジャンルの編集・ライティング・企画を手がける。食欲・物欲・お出かけ欲・温泉欲・ビール欲が赴くままに熊本・九州を駆け回る日々。趣味は二胡。

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