熊本の温泉を旅するビューティツーリズムのすすめ

くまもっと編集部

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温泉ビューティ研究家・旅行作家石井宏子さんの画像

温泉ビューティ研究家・旅行作家 石井宏子

 世界中の温泉を旅する温泉ビューティ研究家の石井宏子さんは、熊本に何度も足を運ぶほどの熊本の温泉ファン。世界中を見て来た石井さんが感じる、「熊本の温泉の魅力」をたっぷり語っていただきます。

■Profile
石井宏子さん Ishii Hiroko
温泉ビューティ研究家・旅行作家
年200日、日本の温泉・世界の温泉や大自然を旅して撮影・執筆する。
温泉・自然環境・食を通じて美しくなるビューティツーリズムを研究。
日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ理事、近著に「感動の温泉宿100」(文春新書)など。

石井宏子さん ホームページ

熊本の温泉・自然環境・食で温泉ビューティツーリズム

 温泉旅には美人になる要素があります。


 温泉に入ること、その土地の美味しいものを味わうこと、そして自然環境や過ごし方など、温泉を旅すること全てが美と健康につながっているのです。
温泉ビューティツーリズムを意識して、熊本の温泉を旅してみると、心も体も肌も美人になれるポイントがたくさんみつかります。

温泉の画像
多彩な温泉を使い分ければ美肌も思いのまま

 まずは、もちろん温泉。熊本県には、118ヵ所の温泉が点在しています。出会える泉質は主に8種類。単純温泉、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉、硫黄泉、放射能泉、酸性泉、含鉄泉の成分を含む多彩な温泉が湧いています。


 水が豊かな熊本県では単純温泉も多いのですが、特徴的なことは、アルカリ性単純温泉が多く見られることです。たとえば、宿ごとに源泉がある植木温泉や、県北の玉名、菊池、山鹿、平山などの温泉地、県南の日奈久温泉などでは、つるつるとろりとした感触にうっとりするアルカリ性単純温泉に出会えます。アルカリ性の温泉は、石けんのような作用があり、肌の汚れや古い角質を落としてすべすべ美肌へ導きます。単純温泉とは、温泉分析をした際に温泉に溶け込んでいた成分の合計が1㎏中1000㎎に満たない場合には、どの成分が含有していても単純温泉となります。成分は様々でも全体の量は少な目で優しい作用の温泉です。

玉名温泉 つかさの湯
玉名温泉
日奈久温泉
日奈久温泉

 天草諸島にも温泉が湧いています。上島の松島温泉は、ナトリウム−塩化物泉。塩の成分が塩皮膜となって肌をベールのように覆います。温泉でぽかぽかと温まった熱や水分が逃げにくくなり、保温&保湿。しっとりぽかぽかが持続します。下島の天草下田温泉はナトリウム−炭酸水素塩・塩化物泉。ナトリウム−炭酸水素塩泉(重曹泉)は、美肌の湯と呼ばれる温泉に多く見られる泉質です。肌の余分な皮脂や古い角質を落としてなめらかにする美肌作用で、肌はつるつるすべすべになります。

下田温泉
下田温泉
上天草温泉郷
上天草温泉郷

 これが、阿蘇山麓のエリアになると、火山や里山のミネラルが加わってきます。南阿蘇温泉はナトリウム−炭酸水素塩・硫酸塩泉、南小国の黒川温泉や小田温泉などでは、炭酸水素塩泉、塩化物泉、硫酸塩泉がバランスよく含有する、マルチビューティ型の温泉に出会えます。硫酸塩泉は、やわらかな感触で肌を包み込むような心地よさが特徴。肌へ水分を運び潤いを与える保湿の湯。肌をしっとりつややかにする美人の湯と呼ばれています。クレンジング作用の炭酸水素塩泉、化粧水のように保湿する硫酸塩泉、パックのように保湿&保温が持続する塩化物泉のトリオは、まさにフルコースのスキンケア温泉というわけです。


 美容のお手入れでも集中ケアをしたくなる時があります。そんな時に入りたいのが硫黄泉です。熊本県では、阿蘇の火山の恩恵を受けて、各地に硫黄を含む温泉が湧いています。復活を目指してがんばっている地獄温泉は酸性の硫黄泉。南小国の黒川温泉や奴留湯、寺尾野、そしてわいた温泉郷の山川温泉などでも湯の花が舞う硫黄の温泉に出会えます。硫黄泉は毛細血管拡張作用があり、血の巡りがよくなります。肌や体の代謝をサポートして、すっきり。湯上りの肌はつやピカです。

黒川温泉
黒川温泉
わいた温泉郷
わいた温泉郷

 さらに、温泉には泉質を問わず共通する一般的適応症があります。平成26年の温泉法の改定にともない、適応症も現代にあうように見直されました。美人は元気から。と考えると健康であるための様々な温泉の作用はとてもありがたいことですが、中でも特に注目したい点は、自律神経不安定症やストレスによる諸症状、睡眠障害やうつ状態などにも温泉がよいと明記されたことです。温泉に入ることで、心に抱えている様々なストレスをリリースし、心の状態を整えることで、ぐっすりと眠れるし、緊張や自律神経の乱れによる血行不良による冷えや疲れもすっと流れていくことでしょう。

海温泉・山温泉・森温泉 気候療法を取り入れてもっと美しく

 熊本には、雄大な阿蘇五岳、そして、東シナ海を望む天草諸島など、海も山も森も豊かです。わたしがドイツで学んだ気候療法とは、海洋性気候(タラソテラピー)、山岳性気候、森林性気候(森林セラピー)など自然環境による気候の特徴を生かして療法や保養をする、温泉保養地の考え方です。

 たとえば、山の温泉は代謝をアップしてリフレッシュしたい時に。標高1000mを超えると気圧の変化から心拍数が上がり血行が促進されます。

温泉の画像
『山』 代謝アップ&リフレッシュ

 森に囲まれた温泉は、木々が放つ酸素や水分、テルペンなどの癒しの物質も漂います。五感を解き放ち、深呼吸をしながら温泉に入れば、酸素もたっぷり取り込むことができ、イキイキと元気になれます。

温泉の画像
『森』 癒し&イキイキ元気

 海辺は気候も温暖で、適度な湿度も保たれています。塩、ヨードなど海洋性ミネラルが豊富な大気を浴びることこそが海洋浴(タラソテラピー)。海水に入らなくても、海の近くの温泉で過ごすこと、温泉にはいって潮風を浴びることなどが、心を癒し、肌や体に不足しがちな海のミネラルを補給することにもつながるのです。

温泉の画像
『海』 心の癒し&ミネラル補給

 では、温泉街はどうでしょうか。実は、温泉街を浴衣に下駄というスタイルで歩くことは気候療法的な健康散歩にぴったりなのです。少し涼しいという浴衣のスタイルは血管や心肺機能、肌のトレーニングになります。そして、下駄で裸足で歩くことは神経が集まる足裏を刺激し脳や体を活性します。買い物、食べ歩き、街の人と触れあう楽しい時間は、脳内ホルモンを活発にさせて、アンチエイジングにつながります。

楽しオイシイ熊本の食は心と体と肌へのご褒美

 熊本はビューティグルメの宝庫です。肌と体のためには、良質なたんぱく質が重要。ヘルシーなあか牛、ジューシーな黒牛の食べ比べができる牛肉、そして、栄養価が高くて低カロリーな馬肉、コラーゲンたっぷりの豚肉も、旅でこそ美味しく味わえます。

料理の画像
料理の画像

 世界農業遺産にも認定された熊本の野菜やお米。山里で獲れる山菜やきのこは、ビタミン・ミネラル・酵素・食物繊維がたっぷりです。デコポンや晩柑など熊本ならではの柑橘類でビタミン補給。ビタミンCをたっぷり摂ることで温泉も体や肌にしっかり恵みが広がります。海辺では、うにやアワビ、エビや魚貝など、旬の海の幸を思いきり楽しみましょう。良質なたんぱく質と海洋性ミネラルを同時にいただけるチャンスです。


 ビューティを意識した旅ごはんは、食事の時間と過ごし方に注目。あか牛丼やうに丼、パスタやお蕎麦など、炭水化物はたんぱく質や野菜と一緒にランチにいただくのがおすすめ。昼から午後にかけての時間は、燃焼が高まる時間なので、燃えやすい炭水化物をしっかりとって燃えやすい体づくりを意識します。スイーツを楽しむなら午後3時。燃焼が高まっている時にしましょう。


 夕食は早めの時間のスタートを。6時とか6時半とかからスタートする旅館の夕食は、実は時間ダイエットにはとてもよいのです。夕食はバランスと順番が大切。野菜、山菜、きのこなどを先に食べ、魚、肉などのたんぱく質をたっぷり、ごはんは最後にちょっぴり。たくさんの品目を摂れる会席料理やコース料理を少しずついただきます。

料理の画像
料理の画像

 夜9時前までに食事を完了し、休憩して消化がすすんでから、ゆっくりと温泉で体を温めて、ぐっすり眠りましょう。朝食前にお散歩か朝風呂を。内臓が目覚めてスムーズな排出を促します。

くまもっと編集部

熊本をあいしてやまない「くまもっと編集部」。必見の熊本定番スポットから知る人ぞ知るこだわりの情報まで何でも知ってるモン。

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