ふるさと寺子屋講師をお招きしてテーマに沿って語っていただく昔語り

No.157 「熊本・観光文化検定公式テキストについて」

講師/(株)マインド。 社長 末吉駿一氏

ベストセラー・1

 お陰さまで、現在、市内の書店でベストセラーのトップになっています。あのハンカチ王子や安倍晋三さんの本を抜いて、売れているということで感謝しています。余談ですが。
 私は県内には学校の同級生は一人もいません。40年ほど前に、移り住み、すっかり熊本に惚れ込んで、県下隈なく取材して参りました。くり返し、くり返しです。四季折々は勿論ですが、時代の流れによる土地の表情の変化も、また魅力あるものでした。約35年間、県の「くまもとの旅」の仕事に従事させて頂きました。その部厚さは、重ねたら60cmほどになるでしょうか、すべて現地で土地の方々から教えて頂いたことばかりです。熊本が、熊本の風土の個性がなんであるか、それを県外の人に知って頂こうと、努力して参りました。
 今回の、この「検定本」の制作にあたらせて頂きまして、有難く感謝いたします。
 この検定本は、いわば私の集大成として一生懸命つくらせて頂きました。


熊本の県土の特色

 早速、本論に入ります。熊本の県土には他県にない特色が山ほどあります。まず自然風土をみますと、いわずもがな「阿蘇」「阿蘇山」です。火口への祈りです。中国の7世紀の本に「阿蘇山は火を噴いている。驚きだ、人は火口で祈りをしている‥‥」と登場しています。日本の山の中で「山」の名が登場するのは「阿蘇山」が最初です。日中友好のはしりと思います。それと、余り語られませんが、「海が三つ」あることです。「有明海」「不知火(八代)海」それと天草下島の東シナ海のうねりが押し寄せる「天草灘」、この三つの、名前が違う海が示すように、海の性質が全く違います。ですから、とれる魚類も、漁法の仕方も違います。実に多彩な風土に恵まれています。

日本史がギュッとつまった熊本県

 熊本の歴史も継続的につながっています。そこから多様多彩な文化が育まれてきました。
 古くは、記紀が伝える景行天皇の御足跡が残り、「水島」はじめ、その故地は万葉集に詠われています。
 スケールの大きい阿蘇神話は今に語りつがれ、古代アートの装飾古墳群は全国屈指で、当時の里人の豊かさを物語っています。
 早くも7世紀には中国・隋の史書(隋書倭国伝)に「阿蘇山」の名が登場します。先程申したように、国際交流の最初でしょう。
 日本古代防衛ラインの鞠智城は菊鹿に、平安時代の古代官道や官倉(米倉)は玉名にはっきり遺されています。
 鎌倉期、頼朝から命じられた相良氏が人吉、球磨を安堵し、山里に仏教文化圏を築き、明治まで(約700年)相良氏は続きます。全国でも異例です。
 南北朝時代の拠点として、菊池や八代は歴史に名を留めています。
 地方豪族が割拠し、それぞれ地方を治めました。国衆一揆の後、豊臣政権のもと清正が入国し、熊本城を築き、細川氏が続きます。
 一国二城の特例地・八代は古くから海外貿易の拠点でした。宣教師・ルイスフロイスは八代の美しさを彼の「日本史」の中で絶讃しています。
 国際交流のもとキリシタン文化が栄え、日本で最初の活版本「平家物語」や「イソップ物語」も天草で印刷されました。
 江戸幕府を驚かせた「天草・島原の乱」も日本史に特記すべきことです。
 そして細川藩の治政のもとに、細川文化が花開きます。皆様ご存知の通りです。永青文庫も里帰りすることでしょう。(後日、新聞で里帰りが報じられた)
 明治維新前後、開国、尊皇の各派の思想家、行動派の志士たちが歴史を彩り、新時代の窓を開きます。
 熊本の町の安眠を醒ました「熊本バンド」「神風連」がありました。そして日本最後の内戦「西南の役」の舞台となりました。
 こうして見ますと、くまもとの中に、日本史がギュッと濃縮されている感じです。これほどはっきり日本の歴史の継続性をもった県はあまりありません。
 ですから、熊本を歩くと、土地の移り変わり(地理的移動)につれて、時の流れ(歴史的移動)がはっきりと見てとれます。
 日本史の移り変わりのモニュメント(史蹟)が歴史絵巻を繰り広げるように展開していきます。すべてが意味のある風土です。但し、単に、無関心に歩く(移動)だけでは判りません。じっくりと予習、もしくは現地で学ばれると、よく判ると思います。この歴史的移動と地理的移動が切れ目なく神話の時代から現代まで同時に味わえるのは熊本だけだと、私は誇らしげに思っています。

「当たり前の文化」からの脱却を

 以上述べましたように、自然、歴史、文化に恵まれて熊本は、当然水をはじめ、豊かな県産品に恵まれています。私たちは、慣れっこになって、すべてを「当たり前」と思って育ってきました。でも、「当たり前」からは「活力」は生まれないと思います。
 「当たり前」をもう一度、故郷を見直して、よく知り学び「感謝」することで「故郷愛」が生まれてきます。
 この検定本は、熊本を、もっと知って頂こう――という気持で、私は作らせて頂きました。いま、「本」が売れていることは、皆様が故郷への「学び」と「愛」をどんどん膨らませてきている証だと、嬉しく思っています。
 詳細な内容は「本を読んで下さい」(笑)
 熊本が誇る、宮中歌会始選者・安永蕗子先生は、おっしゃっています、「生地は聖地」と。
 噛みしめて、味わう言葉と思っています。


熊本・観光文化検定公式テキストブック
熊本・観光文化検定公式テキストブック