南阿蘇はその絵本に出てくるような美しい景観から、物語の舞台になることも少なくありません。南阿蘇では現在「南阿蘇えほんのくに」という絵本に関する新しい取り組みを行っています。絵本が持つすばらしさ、また人と絵本、大人と子どもの関わりをお話していただきました。
南阿蘇はえほんのくに
高森町、南阿蘇村、西原村、山都町では「南阿蘇えほんのくに」に取り組んでいます。この構想は、南阿蘇の豊かな自然をもって人間が本来持っている心の豊かさを引きだそう、という考えからはじまりました。
阿蘇のゆるやかなネットワークづくりということで活動している「阿蘇フォーラム」の二十名ほどの懇談会で、熊本県知事が「南阿蘇はとてもやさしい雰囲気ですね」とおっしゃったのが数年前の出来事。南阿蘇の持つ「やさしい雰囲気」の魅力を生かし、この「えほんのくに」は構想がまとまりました。
作家の葉祥明さんの美術館が南阿蘇村(旧長陽村)にありますが、作品の中には南阿蘇の風景をもとに創られているものもあります。心の和むような風景が南阿蘇には実際にあるのです。豊かな自然、その美しい景観と芸術や文化が、人々に共感・感動を生み出しています。
絵本的世界とは共感する心
ここでは絵本のもつ独特の世界を「絵本的世界」といっています。例えば、子どもの持つ感性、ものごとの受け止め方に「共感」があります。モノがいきいきと命を持って語り出す世界であり、「木も石も動物もみんな友達!」といった捉え方です。「ぬいぐるみが濡れた」=「かわいそう」という痛みや喜びを分け合うこと、また「素直なおどろき」では「すごいなぁ、空が青い!」といったあるがままのことに感動を覚えることも「絵本的世界」、つまり子どもの頃はみんなが持っていた世界観のことです。絵本のなかでは登場する動物がしゃべったり考えたり、嬉しかったり悲しかったりする物語のものもあります。子どもたちはそれを自然に受け止め、共感しているのです。
あるがままを受け入れる大切さ
南阿蘇村が豊かな自然や美しい景観に恵まれていることを述べましたが、美しいものを美しいと思う気持ちは一体どこから来るのでしょうか。私の経営するペンション「森のアトリエ」には、さまざまな方々がお見えになりますが、目の前には素晴らしい景色が広がっているのに目に入らない方もいます。これは心のゆとりや、感性、ものの見方が人それぞれにあるように思います。景色に限らず、歴史的なものや文化的なものにも同じようにいえるのではないでしょうか。
私たちは大人になり、社会へでるとついついものごとを比較してみたり、何かに閑散してみたりと、見方が変わってくることが多くなります。それも生きていく上で必要なことなのですが、このような現代だからこそ大切なことが絵本的世界にはあるのではないかと思います。あるがままを受け入れ、全てのものが等しく大切な世界があること、たった一つしかないこと、分けられない、比べられないものの存在を大切にしてほしいと思います。
絵本を飛び出して活動・体験
ペンション「森のアトリエ」では九州一の天体望遠鏡をそなえたルナ天文台を併設しています。この天体望遠鏡をのぞいていただくことも絵本的世界の活動のひとつです。直接的体験の貴さや自分を越えたものへの畏れと驚きを感じてもらうことはもちろん、「宇宙は自分を中心にまわっているのではない=生き物の非土地としての謙虚さ」を思うことにつながっていきます。そして、今ここに自分が存在していることへの感謝を思うことができるのではないでしょうか。
絵本的世界は絵本として表されるだけでなくこうした体験を通して感じてもらったり、絵に表したり、歌を歌ったり、あらゆるもので存在する世界です。
絵本的世界の活動に取り組む阿蘇フォークスクール、自然案内人、読み聞かせの会等の方々がいます。えほんのくにはどんな人たちにも開いており、国民を待っています。
平和で豊かな世界を創るために、これからさまざまな催し物や活動を実現すること、システムの整備を行い皆さんのこころにある「えほんのくに」を南阿蘇えほんのくににも創りあげたいと思います。みんながやさしくなれる絵本のくにに多くの人が国民となってくれることを祈っています。
【葉祥明阿蘇高原絵本美術館】 |
*南阿蘇えほんのくに*
■参加するには……入国ビザを取ろう(チケット&割引券)
■国民になるには……国民登録&パスポート(会員証)とボランティア通過の発行
■イベント みんながやさしくなれる南阿蘇「えほんのくに」2006
開催日:2006年5月20日(土)、21日(日)
開催地:葉祥明阿蘇高原絵本美術館
上色見生涯学習センター
如水館阿蘇分館
南阿蘇ルナ天文台
すぱーく長陽
■ゲスト:葉祥明さん、柳田邦男さんほか
<お問い合わせ>
南阿蘇「えほんのくに」事務局
TEL:0967-62-0123
|
|