ふるさと寺子屋講師をお招きしてテーマに沿って語っていただく昔語り

No.130 「肥薩おれんじ鉄道の旅立ち」

講師/肥薩おれんじ鉄道 専務 桝隅 守人 氏

肥薩おれんじ鉄道が走り出しました。経営的には厳しさが予測されていますが、地域の欠かせぬ足として、ユニークな観光路線としての役割、責任は大きなものがあります。 そこで専務の桝隅守人氏に現状や課題、今後の展開などについて語って頂きました。 要旨を紹介します。

新幹線開業に伴い発足


  肥薩おれんじ鉄道が開業して3ヶ月が過ぎました。まずは順調な滑り出しといいたいところですが、課題も多くあります。 本日はそのことについても率直にお話ししたいと思います。

  肥薩おれんじ鉄道は第3セクターですが、くま川鉄道や南阿蘇鉄道とはちょっと違う点があります。 それは新幹線開業に伴ってJRから経営分離された路線を引き継いだ鉄道ということです。 いわば新幹線の落とし子といえるかと思います。

  全国にこうした例は長野県のしなの鉄道、岩手県のいわて銀河鉄道、青森の青い森鉄道の3社があり、当社が4番目ということになります。 正直申しまして、いずれも赤字の在来線を引き継いだわけですから経営は楽ではありません。

  ただ、このなかで長野のしなの鉄道は田中知事が社長交代を決断し新しく民間出身者をすえました。 すると業績が上向きに転じました。 わが肥薩おれんじ鉄道の社長も東京の有名な結婚式場「椿山荘」の総支配人を務めた嶋津忠裕氏です。 民間の経営ノウハウを生かした鉄道事業へ全力を挙げて取り組んでまいります。


コスト削減に全力


  概要を申しますと、肥薩おれんじ鉄道は熊本県の八代市から鹿児島県の川内市までの10の市長村を27の駅で結んでいます。 営業キロ数は116.9キロ、車両は19両です。

  車両はすべて新車購入したもので、JR九州から譲渡されたものは1両もありません。 なんだか景気のよい話のように聞こえるかもしれませんが、もちろんこれにはわけがあります。

  従来の鹿児島本線はオール電化でしたが、肥薩おれんじ鉄道はディーゼル車を使用します。 従って今までの車両は使えませんので新車購入となった次第です。 なぜそんな一見もったいないようなことをしたかですが、長い目で見るとディーゼルのほうがコスト削減になるからにほかなりません。 それにスピード、騒音とも格段に改良され、以前のような悪いイメージは解消されています。

  コスト削減ということは私たちにとって至上命題です。 大げさでなく、涙ぐましい努力を続けています。 県庁OBの私がなにより痛切に感じたことはこの厳しさでした。

  たとえば社員数は94人ですが、女性は1人もいません。 お茶を飲みたいときは私も自分で入れます。 八代駅内の本社には7人しかいませんから自分でするほかないのですが、実際は飲むひまもないといったところです。 それほど一人で何役もこなさなければならないのです。

  普通、鉄道は1キロ当たり1人の人員が必要といわれます。 おれんじ鉄道は120キロですから120人です。 先ほど申しましたように現状は94人。 人員不足は否めません。

  しかし、これははっきりと申し上げておきますが、安全性は大丈夫です。 先だって大雨で運休が相次ぎお客様にご迷惑をおかけしました。 私は一刻も早い復旧を望みましたが、ルールというか決まりが厳然とあってすべてをクリアしないと動かすことはできないのです。 いい悪いではなく、鉄道事業の指名、大変さをあらためて思い知った次第です。


個性豊かな観光スポット


  悲観的なことばかり述べてきたように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。

  一般車両のボディをご覧ください。 白色をベースに、沿線の産物である柑橘系のオレンジ色と、青い海のブルー、豊かな大地を表すグリーンの3本のラインが入っています。 それは肥薩おれんじ鉄道が実りある未来と創造をもたらす地域密着型の企業でありたいという理念を表現したものです。 これがある限り明るい展望は可能であると私は確信しています。

  最近、うれしいことがありました。 日奈久温泉駅(開業を機に日奈久駅から改名)で地域の方々の企画による「オカリナハーモニカ演奏会」が開かれたことです。 駅をオープンな、楽しい場にしていくことは親しみある肥薩おれんじ鉄道を目指す上で欠かせないことです。

  親しみ、楽しさという点では、イベント列車「おれんじちゃん」「さっぴいふるさとくん」のご利用もお待ち申し上げます。 研修会や子ども会のイベント、歓送迎会、忘・新年会、各種宴会など使い方はいろいろです。 ご希望の出発駅、日程などお客さまのご希望に応じて運転します。ちなみに貸し切り料金は55,000円(2時間)円です。

  日奈久温泉、うたせ船、湯の児温泉、湯の鶴温泉、スペイン村、和泉麓武家屋敷、阿久根大島、川内高城温泉などなど、思いつくまま挙げても沿線には個性豊かな観光スポットがいっぱいです。 どうぞ肥薩おれんじ鉄道でお出かけください。 お問合わせはもちろん、皆さまのご提言、アイデアなどなんでも遠慮なくお聞かせください。

芦北・うたせ船 水俣・湯の児温泉


〔お問い合わせ先〕 肥薩おれんじ鉄道株式会社  TEL:0965-32-5678(代)