ふるさと寺子屋講師をお招きしてテーマに沿って語っていただく昔語り

No.127 「 米米惣門ツアー 」

講師/下町惣門会会長 井口 圭祐 氏

山鹿の旧豊前街道筋には江戸・明治の面影が今も色濃く残ります。「下町惣門会」はこの古い街並みを案内する「米米惣門ツアー」で好評です。惣門とは街道の玄関口の番所のことで、下町地区の地名としても呼ばれています。会の会長でご自身も「木屋」という屋号の米麹屋を営む井口圭祐氏にお話ししていただきました。


「米」でつながる地区の特性


 山鹿の旧豊前街道沿い、古い町並みが残る下町地区で「米米惣門ツアー」という地域活動に取り組んでいます。

 ネーミングの「惣門」は菊池側に面した豊前街道の玄関口にあった番所です。治安維持のため設けられ、夜間は通行が許されなかったそうです。下町地区はもっぱらこの「惣門」の地名で呼ばれており、この名を付けました。惣門は昨年、立派に再建され当時の姿がよみがえっています。

 「米米」ですが、こちらは菊池川の水運による米の集散地として発展した山鹿の歴史にちなみます。下町地区には酒造場や米麹屋、米蔵などが多くあり、いわば「米」でつながっている点で特性があります。そういうわけで「米米惣門ツアー」です。

 取り組みのきっかけは4年前のNHK朝の連続ドラマ「オードリー」でした。下町地区でロケが行われ、私たちもエキストラとして参加しました。そのときの雑談の中で、放送後はこの地を訪れる人が増えるに違いない。となると、案内して紹介もできる受け入れ体制を整えておく必要がある。そんな話がお酒も入って盛り上がり、さっそく準備に取りかかることになったのです。

 それからは無我夢中でした。放送日がロケから3ヶ月後ということで時間がありません。しかし、いま考えると時間が限られていたのがよかったと思います。毎週月曜日、夜7時にメンバーが集まり、なんとかモニターツアーができるまでに漕ぎ着けました。反省点、改善点などいろいろありましたが、参加者の旅館の仲居さんが言った「目からウロコでした」にこれまでの苦労が報われた思いでした。


豊前街道
醸造元や和菓子屋、江戸時代様式の芝居小屋八千代座がある豊前街道。
藩政時代は熊本の城下と豊前の小倉を結んだ。
千代の園酒造

「米米惣門ツアー」の中でも人気の立ち寄り処。


オンリーワンの「宝物」探し


 目からウロコは私たちも同じです。豊前街道や菊池川の歴史を学んでいくなかで、これまで見えなかったことが見えてきます。例えば、火よけ地蔵です。なんの変哲もないただのお地蔵さまと思っていましたが、調べてみると街を火事から守るありがたいお地蔵さまで、約30年前の大火のとき火はここで止まったということです。

 それは先人たちが現在の私たちへ語りかけるメッセージのような気がします。そして、そういう声が聞こえてきたらしめたものです。ナンバーワンではないかもしれませんが、オンリーワンである地域の「宝物」が見つかるのです。

 ツアーは菊池川河畔から光専寺までの200mを約1時間かけて巡ります。酒造場では酒造りの資料や道具などが見られるほか試飲の楽しみもあります。米麹屋は昔ながらの町屋形式の建物で、間口こそ狭いもののトンネルのように長い通路の奥に石積みの麹室があります。240年前の米蔵はギャラリーになるなど時間もゆっくり流れていきます。最終ポイントの光専寺には本物の宝物があります。鉄眼版一切経8万冊です。これは山鹿一の米問屋宗方屋利助が京都から買い求めたもので、このとき身請けした遊女の夕霧の墓も眠っています。光専寺は西南戦争の舞台にもなりました。

 いずれにせよ、百聞は一見に如かずです。4月10・11日「山鹿温泉祭」が開催されます。お出かけの際は、街並み散策もお楽しみ下さい。


八千代座
明治43年に立てられ、現在も様々な催しに利用されている芝居小屋。
催しの無い日は見学可能。“奈落の底”を通ったりと見応え充分。


〔お問い合わせ先〕 山鹿温泉観光協会 (TEL)0968-43-2952