ふるさと寺子屋講師をお招きしてテーマに沿って語っていただく昔語り

No.120 「 相良寺と観音様のお救い 」

講師/相良住職  千田 晃彰 氏

菊鹿町の相良(あいら)寺。ここには木彫りの座像では日本最大と言われる千手(せんじゅ)観音や日本に1本しかないアイラトビカズラ、また安産、子授けの霊験など数々の興味深い縁起・由来が伝えられています。そこで今回の寺子屋塾は千田晃彰住職をお招きし、「相良の観音さん」として親しまれている相良寺についてお話ししていただきました。要旨をご紹介します。


〔 相良(あいら)寺 〕 〔 千手観音像 〕


日本最大の木彫りの座像


相良寺は天台宗比叡山延暦寺の末寺で、今から約1200年前、宗祖伝教大師(最澄上人)が開かれたお寺です。私はその91代目の住職を務めさせていただいております。山号を吾平山といいますが、吾は自分自身のこと、平はおだやかなこと。つまり常に気持ちをおだやかに保ちましょうという意味が込められています。

ご本尊の千手(せんじゅ)観音です。写真からも伺えると思いますが、燦然たる輝き、丈六尺(約1.8m)もの誠に威厳あふれる大きさで、木彫座像の千手観音では日本最大といわれています。

観音様の手の数を数えますと42本あります。そのうちの2本は薬の入った器をお持ちですから、残りの使える手は40本です。観音様は1本の手で25通りのことが出来るといわれていますので、全部合わせると1000本。ですから千手観音というわけですが、これはもちろん無数、数限りないことを言い表しており、千住観音様は数限りない人を救っていらっしゃるのです。


アイラトビカズラ伝説


観音様の写真をもう一度ご覧下さい。わかりにくいかもしれませんが、左下に小さく人間の首のようなものが見えませんか?心霊写真なんかではなく、緒方三郎という源氏方の武将です。

源平合戦の折、平家方の一党が相良寺に逃げ込みました。それを追ってきたのが緒方三郎の軍勢です。相良寺は戦火に遭って本堂はじめ数多くの坊舎(寺院)のことごとくを焼失してしまいました。

しかし、ご本尊の千住観音様は無事でした。それには不思議な言い伝えが残っています。 近くのアイラトビカズラの枝に飛び移って難を逃れたとのことです。あるいはまたこのカズラに姿を変えられたともいわれ、敵の馬にからみつき、落馬した武将を討ち取ることにもつながりました。その武将こそほかならぬ緒方三郎でした。


安産、子授けにご利益


アイラトビカズラは観音様の言い伝え同様に不思議な木です。マメ科のつる性の植物で中国中部に分布し、日本では1本ここだけでしか見ることができません。国の特別天然記念物に指定され、以前、開花は極めてまれといわれましたが、最近は4月下旬から5月中旬にかけて深い紫色のチョウのカタチをした花を咲かせます。相良寺にあるアイラトビカズラは元木から挿し木で殖やした株のものです。

相良寺は昔から「相良の観音さん」とよばれて親しまれています。それは、安産、子授けにご利益があるといわれているためです。

朱雀天皇の時、皇后が子宝に恵まれなかったのか、ご出産で苦しんでおられたのか定かではありませんが、勅使が来山し7日間本堂にこもられ祈願されました。すると皇子がすやすやとお生まれになったという故事に由来します。

私はお母さんに抱かれてお参りに来る赤ちゃんを見るたびにその子の幸せ、世の平穏を願わずにいられません。