ふるさと寺子屋講師をお招きしてテーマに沿って語っていただく昔語り

No.071 「 剣豪丸目蔵人佐が愛した錦町 」

講師/錦町 町長  園田 耕輔 氏

県観光連盟主催、県観光振興課後援「ふるさと寺子屋塾」熊本の歴史、文化を語り、知り、学び、伝えることを目的に毎月開催。県観光連盟発行「くまもとの旅」をテキストに、それぞれのテーマに沿った内容で、権威ある講師の先生を招き教授していただいています。


今月のテーマは、「剣豪丸目蔵人佐が愛した錦町」です。


宮本武蔵と並ぶ熊本が生んだ剣豪丸目蔵人佐(くらんどのすけ)は、1540年に八代に生まれます。17歳の時に故郷を離れ兵法の修行に出ます。永禄年間、将軍足利義輝の御前で伊勢守と演武を行い、将軍より感状を授けられ伊勢守門下の四天王と称せられるまでにいたりました。その後の武者修業の後、蔵人佐は新陰流崩しのタイ捨流を案出し、相良藩に帰藩し、隠居後は晩年を錦町で過ごしました。蔵人佐の墓は現在も同町にあります。

今回は丸目蔵人佐と錦町の文化・歴史をからめて、錦町町長の園田耕輔先生に講演して頂きました。その要旨をご紹介いたします。


剣豪 丸目蔵人佐と錦町


丸目蔵人佐は、1540年に八代に生まれました。16歳で大畑に来襲した薩摩の兵と戦って功績をあげ、翌年故郷を離れ兵法の修行の旅に出ます。京都で新陰流の達人上泉伊勢守信綱の門で5年間修行しました。永禄年間、将軍足利義輝の御前で伊勢守と演武を行い、将軍より感状を授けられ、ついに穴沢浄賢・疋田文五郎・柳生但馬守とともに伊勢守門下の四天王と称せられるにいたり、27歳のとき、新陰流極意免許皆伝を受けて一時帰国しましたが、やがてまた武者修行の旅に出ました。

その修行で京都に行き、「肥後国求麻郡新陰流丸目蔵人佐藤原長恵並門人丸目寿斎・丸目吉兵映衛・木野九郎右衛門天下一」と書いた高札を立て、十七日間清水に参篭して真剣勝負の相手を求めたが、ついに一人の相手も現れなかったというエピソードもあります。後年、蔵人佐は新陰流崩しのタイ捨流を案出し、当時幕府の指南役となっていた同門の柳生但馬守がいる江戸を訪れ、その優劣を決しようと申し出ましたが、但馬守は「優劣を決することは日本に二人の達人の一を捨てることになって惜しむべきである。それよりも天下を二分し、貴殿は関西兵法天下一、自分は関東三十三ヶ国の天下一とならん」といって双方が了解したといいます。

その後彼は、一武村(現錦町)に移り住み、水田を開き、畑を耕すなど農業の指導者として活躍し、1629年に90歳の生涯を終えました。

錦町には彼の墓とともに、太刀二振り、小刀二振り、木剣一振り、鉈一丁、巻物など数巻が残されています。

現在錦町では、剣豪「丸目蔵人」顕彰全日本選抜剣道七段選手権大会も開催され今年で10回目を迎えました。その際、町民の方々の家へ民泊して田舎料理を召し上がってもらったりと、人と人とのふれあいも大切にされています。また、九州管内の子どもたちを800人ぐらい集めて、試合をしたり「タイ捨流」を伝承されている方々に披露してもらうなどの、剣豪「丸目蔵人」顕彰少年剣道大会と称した剣道大会を毎年開き、今年で30回目を迎えます。

このように、丸目蔵人先生が残した剣道は、人と人とを繋ぎ、また心身ともに鍛えるもとになっています。


フルーツの里


町のキャッチフレーズにもなっているように、錦町ではフルーツの生産も盛んに行われています。

梨、桃、栗やアールスメロンなどのフルーツに加えて、タバコや米、ごぼう、お茶なども作られ、同町ではこれらを生かした商品開発にも力を入れています。

桃を原料とした桃のリキュール(桃楽園)、梨のリキュール(梨幸園)、メロンのリキュール(錦祥園)、その他現在お茶のリキュール(茶笑園)も開発中ということです。

このことからもわかるように、農業が町の活性に大きな影響を与え、まさに町の生命維持産業となっているのです。

町では、錦大学という名のリーダー養成講座等も行われ、後継者育成なども盛んに行われています。また、この他に出前講座、人材バンク、ヤングセミナーなど町の活性化につながる講座がいくつも開かれています。

このようにして、町民が一体となって町の発展を考え、実行しているのです。


自然と文化のまち


錦町は自然にも恵まれた町でもあります。

町の中央を球磨川が流れ、山にも囲まれています。

川では鮎釣りを楽しむことができます。また、県の「緑の百景」にも選出された太平渓谷という景勝地が、急流球磨川の支流水無川の上流にあります。清流にはヤマメ等が小さな滝を飛び跳ね、釣り、キャンプなどで賑わいます。また、河原には無色無臭のラムネ鉱泉も湧き出ています。

山にはふるさとの森の家があり、付近では春は山菜狩り、夏はキャンプ、魚釣りなど自然生活体験が楽しめます。

そのほかつつじ自然公園などもあり、花の時期には広さ3ヘクタールの公園内は大勢の人でにぎわいます。

自然もさることながら、文化の香も高いのがこの町です。

国指定重要文化財の「桑原家住宅」をはじめ、県指定史跡の「京ヶ峰横穴古墳群」、町指定有形文化財の「丸目蔵人佐の墓」、相良三十三観音31番札所の「土屋観音」、32番札所の「新宮寺六観音」など歴史が育んだ伝統と文化がたくさん残っています。

このように、たくさんの文化や歴史、自然に育まれた錦町は人吉市内から車で約10分。町には温泉施設もあるので、伝統ある歴史や文化を楽しみ、フルーツや田舎料理などの食物を楽しみ、温泉につかり、お湯を楽しむ…。

11月に行われるふるさと祭りには約5万人もの人が訪れます。

いつ来ても四季折々の楽しみ方ができる錦町へぜひ一度遊びにきてください。