県観光連盟主催、県観光振興課後援「ふるさと寺子屋塾」熊本の歴史、文化を語り、知り、学び、伝えることを目的に毎月開催。県観光連盟発行「くまもとの旅」をテキストに、それぞれのテーマに沿った内容で、権威ある講師の先生を招き教授していただいています。
今月のテーマは、「くまもとの伝統工芸」です。
刃物、竹細工、陶芸、象嵌など熊本には歴史ある素晴らしい伝統工芸品がたくさんあります。
今回は私達の暮らしと密接に関わりながら意外と知られていない熊本の工芸品の魅力を再発見します。今秋は熊本の伝統工芸400年祭が熊本伝統工芸館で開催されます。
その歴史や工芸品が生まれた背景と風土などを交えて熊本伝統工芸館長の吉丸良治先生に熊本の伝統工芸の魅力についてお話いただきました。その要旨をご紹介します。
熊本県の伝統的工芸
熊本県では、昭和53年に「熊本県伝統的工芸品の指定要項」が制定され、これに基づき知事が次の要件を満たすものを伝統工芸品として指定しました。
①主として日常の生活に供されるもの
②製造過程の主要部分が手工業的であるもの
③伝統的な技術・技法により製造されるもの
④伝統的に使用してきた原材料を主たる原材料として製作されるもの
⑤おおむね30年以上の歴史を有するもの
現在、熊本の伝統的工芸品指定要項により指定された品目は約80品目に及んでいます。その種類は、金工品、木工品、陶磁器、染織物、紙工品、竹製品、玩具、その他和楽器などがあります。言い換えれば、日用道具と、海や山での作業用具、それに民俗芸能の道具に大きく分けられます。
これらは、産出する粘土と陶器生産、不知火海の沿岸漁業と竹篭、緑川流域針葉樹と桶、人吉の木材資源と木工・刃物、山鹿の和紙と紙工芸など、いずれもその土地の人々の暮らしと密接に結びついて作り続けられてきたものです。
熊本県は自然と素材に恵まれており、作る人と使う人のコミュニケーションによって、作ったり作り直したりして土地の人のモノを作るという生産形態が今なお数多く残されています。他県の伝統工芸技術の数多くが土地の暮らしの道具ではなく大消費地へ売るための生産技術となっているなかで、これはきわめて貴重なことといえるでしょう。
熊本が生んだ人間国宝
熊本には過去、漆工芸の高野松山氏(昭和5年没)、同じく増村益城氏(平成8年没)、肥後象眼の米光太平氏(昭和54年没)の3人が人間国宝(重要無形文化財)に指定されていました。これらの先達が残された「技」、「伝統」は、しっかり残したいものです。
熊本県の伝統工芸の指定
・肥後象眼[7人]…全国4大産地(京都、加賀、富山高岡)の一つ
・刃物[川尻4人、人吉球磨12人、宇土2人、水俣3人、八代2人、ほか]
・陶磁器[小岱焼9人、高田焼3人、高浜焼他天草4人]
・木工芸品[人吉家具10人、熊本市8人(川尻桶他)他]
・竹工芸品[竹篭10人、肥後三郎弓1人、尺八1人、他]
・紙工芸品[山鹿灯篭5人、来民うちわ1人、宮地和紙1人、他]
・郷土玩具[肥後こま、彦一ごま、おばけの金太、木葉猿、きじ馬花手箱3人、他]
・その他[三弦の駒、撥、太鼓、鮫皮漆塗細工、他]
くまもと工芸400年祭"源流と未来展"
くまもとに工芸が生まれて400年を記念して、今年11月「くまもと工芸400年祭」が開催されます。それと併せて、象嵌の全国4大産地(熊本・京都・加賀・富山高岡)とスペインから職人や関係者の方などをお迎えして、「象嵌サミット」も開催されます。
これは、今年開かれる「くまもと未来国体」を契機に、くまもとの伝統工芸の源流を探り求めて、根っこになったものなどを展示し、見る人と作る側の人が一緒になって、お互いに勉強して新しい生き方、在り方を発見するという目的で開催するものです。
街の潤いは伝統工芸と伝統菓子の育成から
どの工芸に対しても言えることですが、これらの技術・技法などを受け継ぎ、残していく後継者の育成が最重要課題といえます。
また、これらの工芸品などはファンの方々に育てていってもらうということです。見る側・求める側の人が好むようなものであれば、需要もふえてくると思います。そのためにも、まだまだ努力が必要であるといえます。
他県では、街に行くだけでその土地の雰囲気が味わえるところがあります。それは、伝統工芸や伝統菓子など、街のなかに文化があり潤いがあるからです。
現在は、各地に色々な観光地がありますが、自然だけで人を呼べる場所というのはかなり少なくなってきました。
人がいて、伝統工芸や伝統菓子などの文化がある、そんな潤いのある街に熊本もなっていくべきではないでしょうか。
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