県観光連盟主催、県観光振興課後援「ふるさと寺子屋塾」熊本の歴史、文化を語り、知り、学び、伝えることを目的に毎月開催。県観光連盟発行「くまもとの旅」をテキストに、それぞれのテーマに沿った内容で、権威ある講師の先生を招き教授していただいています。
今月のテーマは、「火の国の炎のピラミッド」です。
阿蘇の神々を祀る火の国熊本の神社群。今から約1500年前に建立され、阿蘇五岳とともに、現在でも私たちの生活と深い関わりを持っています。
阿蘇神社を始め、阿蘇地域の中心神社の場所が、実は阿蘇五岳をあわせ、幾何学的に計算され、配置されているという論文が先日発表されました。
今回は、この研究を発表された白水村八坂神社宮司・田尻盛永先生に、その驚くべき事実についてお話していただきました。
今、明らかになる「火の国の炎のピラミッド」
自然の阿蘇五岳と人為の神社群。それらの位置関係を調べると、驚くべき事実が浮かび上がってきます。それらの神社群が黄金比の拡大数列であるフィボナッチ数列と呼ばれるものによってキチンと配置されているのです。
具体的に言うと、阿蘇神社とその補完社である霜宮、八坂神社とその補完社である竜王社(久木野神社)、この4点に囲まれた図形は、きれいな平行四辺形になります。そしてその中心に阿蘇五岳があります。ちょうど噴火口と火口湖の中間地点が中心となります。その中心を通る北北東に傾いた二十二度四十二分の線の延長上に国造神社があります。
その他の阿蘇郡内の小国両神社、草部吉見神社、吉松宮、群外では健軍神社、甲佐神社、三角の郡浦神社、これらは阿蘇の三摂社といわれ、特別に所縁のある神社ですが、これらの火の国最古の十社と阿蘇五岳の山頂の三角点を厳密に結ぶと、きれいに配置がなされています。
そして、神社の境内の造り、石垣、建物までも、すべて類似性と対称性を持って造られていることがわかりました。
それらの配置のすべて数学的に計算されており、阿蘇五岳の中で、高岳の炎を噴き上げる姿を核となし、自然の五岳と人為の神社群の組み合わせによって、ピラミッド状に造形されているのです。
計算された神社配置の意味とは?
阿蘇五岳にはそれぞれ意味が込められています。高岳は天と日照を、杵島岳は大地と水を象徴しており、それらを結びつける存在が烏帽子岳です。火と水の調和を保つ山が往生岳です。
各神社の神域、境内地の中にはすべて阿蘇五岳の意味が組み込まれています。敷地面積、その形全てに共通したものがあり、幾何学的に厳密に計算すると、それぞれ阿蘇五岳の標高と一致するのです。つまり、炎のピラミッドは、天の日照と地上の水の相互調和を表しており、天地のエネルギーの循環がうまくいくようにという意味が込められた造形なのです。
そして、それら造形には大きく3つ要素があります。1つめは阿蘇五岳と神社、つまり自然と人為の調和です。2つめは黄金比の神社配置による神々の配置です。3つめは陰陽の調和に重きを置く儒教からきた天人相関説による御祭神の奉祭です。
また、特色として、大自然の摂理への帰順と祈り(宗教)、数学的(科学的)な造形、そして造形バランスの芸術性。これらすべてが見事に調和しているのです。
火の国ピラミッドは、ナスカの地上絵と同時代に造られた。
この驚くべき造形がいつ造られたのか。今から1500年前、西暦470年プラスマイナス20年に造られており、文献的にも間接的に証明可能です。これは、ナスカの地上絵が描かれた時代で、面積にするとナスカの地上絵の約5倍(約2500k㎡)。一つの神社の位置が少しずれただけで、炎のピラミッド全体が崩れてしまうという厳密な配置。しかも、各神社の配置だけでなく、神社の神域から石段、敷地面積、その形に至るまで無意識に造られたところが一つもないのです。つまり、今から1500年前に、炎のピラミッドの隅々までが計算されているということに、古代阿蘇の神秘を感じずにはいられません。
現代のように数学論理が確立していない時代、これらの計算を一体どのようにしておこなったかはナゾですが、おそらく数学的才能に飛び抜けた人物、あるいは集団がいたのでしょう。
これまでの常識を超えた造形、「火の国の炎のピラミッド」。熊本にとって神聖なる場所として存在した阿蘇五岳と神社群が、さらに重きを増して、その存在の大きさを私たちの前に現しました。祖先、古人の偉大さが再認識され、世間の注目を集めるとともに、私たちは、阿蘇の真の意味を知ることでしょう。
人間が生きていくのに欠くことのできない天と地のエネルギー、つまり日と水の調和。大切に守られてきた彼らの意志が、私たちへと受け継がれているのです。
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