集落の真ん中でもうもうと地熱蒸気が湧く「わいた温泉郷」。
「わいたに来ると、
このコーヒーが飲める」。
そう言って来てもらえること。
今の私の使命かな、
と思っています。
小国町の山深く豊かな自然を残す涌蓋山の麓に、もうもうと湯けむりが湧く場所がある。「わいた温泉郷」と呼ばれる地域は、まさに地底から噴き出す蒸気が一帯を覆うほどの別世界。この湯けむりに魅せられて、新たな道を突き進んでいるアツい女性が山本美奈子さんだ。
『地熱珈琲』と名付けた、日本でも唯一のコーヒーを目指して全国から人がやってくる。「町おこしという思いはあったものの、自分にできることから始めただけ」と山本さん。「湯けむりの町を知って欲しくて、どうしたら人を呼べるかなと考えた時にコーヒーだったらできるかなと思ったんです。コーヒーは後付けで(笑)」。
“食”の大切さに気づかされ田舎を巡るうちに出会ったのが杖立のまち。温泉に毎日入れる町で暮らしたくて、すぐさま移住を決意したという。地域おこし協力隊の活動をしながら3年ほど経ったときに、もっとこの町を知ってもらいたいと描いたのが『地熱珈琲』のアイデアだった。
「地熱蒸気の力を使ってお湯を作り、50℃のお湯で豆を洗います。その豆を地熱蒸気が沸く“蒸し場”で蒸した後に焙煎する、その2カ所で地熱を使っています」。
地熱を使った独特の工程を加えることで豆の芯までしっかりと熱を伝え、焙煎時の生焼けを防ぎ、香りが最大限に引き出されるという。地熱に加えてこだわりの「一番出汁抽出ドリップ」で雑味やえぐみのない、すっきりとした美味しいコーヒーを提供。ここでしか味わえない唯一無二の『地熱珈琲』が生まれると、その話題はすぐに全国に知られることになったが、何より山本さんの生き方に多くの共感が寄せられた。
「自分らしさを見つけられたかな」と山本さん。「四季の移ろいをすごく感じるんです。真っ暗な夜も満天の星があって、月明かりの変化も嬉しいんです」。店を手伝うためにお母様も杖立に移住。店の中でのさりげない親子のやりとり、その穏やかな笑顔が充実した日々を表していた。
豆を蒸したり、焙煎工程は平日に。焙煎した豆は7日〜10日の熟成を行う。
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- 「一番出汁抽出ドリップ」は30gの豆から120ccの濃い原液を抽出。丁寧なドリップは見惚れるほど。
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- お母様の美津子さんと、地熱蒸気の湧く店の前で。
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- 地熱乾燥に使っていた倉庫を見つけたことも運命的だったそう。
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- 店のすぐ前にある配管は地熱蒸気を通すもの。コックをひねれば蒸気が噴き出すという、地球の恵みをシンプルに生かす装置が当たり前の土地なのだ。
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小国町
地熱珈琲
070-8436-3872
熊本県阿蘇郡小国町西里2811
営業日:土・日曜 10:00〜17:00
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